名鉄ト50形貨車

名鉄ト50形貨車の概要

名鉄ト50形貨車は、かつて名古屋鉄道で使用されていた木造の無蓋貨車で、主に貨物運輸に利用されていました。この貨車は、元々美濃電気軌道および谷汲鉄道に属していた4両から構成されています。具体的には、ト50形には美濃電気軌道のト319およびト320、さらに谷汲鉄道のチ1およびチ2が含まれており、すべて同一の設計で製造されています。

1926年に運用が開始され、当時は美濃電気軌道の北方線の延伸と、接続する谷汲鉄道の開業に伴い、両者の共通運用が見込まれていました。このため、同一形式の貨車が存在する理由が伺えます。当時の線路は、国鉄や他の私鉄と接続していなかったため、特に連結器はピン・リンク式連結器が採用されていました。

名車両の誕生

ト50形のト51およびト52は、日本車輌製造により同じく1926年に製造され、美濃電気軌道のト319とト320として運用されました。この時期、鉄道は北方線での利用が中心であり、1930年に名古屋鉄道が美濃電気軌道を統合し、名岐鉄道へと改められます。その際、ト319およびト320も名岐鉄道へと承継され、最終的に1941年にはト50形として改番されました。

一方、ト50形のト53およびト54も日本車輌製造で同じ1926年に製造され、谷汲鉄道のチ1およびチ2として運用が開始されました。1944年には名古屋鉄道が谷汲鉄道を合併したことにより、これらもト50形に編入され、ト53およびト54として改番されました。

戦後の運行とその終焉

戦後には、揖斐線や谷汲線での貨物輸送に利用されることになりました。1950年には連結器がピン・リンク式から自動連結器に交換され、これにより運行の効率が向上しました。しかし、揖斐線や谷汲線には電気機関車が運用されていなかったため、電車（初代モ450形、モ560形、モ110形、モ160形など）が貨車を牽引する形で、小口輸送としての混合列車で活用されていました。

残念ながら、1963年には揖斐線と谷汲線での貨物営業が廃止され、ト50形もその運用を終えることとなり、廃車扱いされました。これにより、名鉄ト50形貨車は交通史の中で重要な役割を果たしながらも、その姿を消していきました。

参考文献

清水武・田中義人・澤内一晃『名古屋鉄道の貨物輸送』フォトパブリッシング、2021年。ISBN 978-4-8021-3270-1。

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