吐蕃等路宣慰使司都元帥府

吐蕃等路宣慰使司都元帥府について

吐蕃等路宣慰使司都元帥府（とばんとうろせんいじしとげんすいふ）は、モンゴル支配時代のチベットで設立された地方行政組織の一つです。この機構は、宣政院の「西番三道宣慰使司」、つまりチベットの三つの地域の一つであるドカムを主管していました。モンゴル語では「ドカムの宣慰司（mdo-gam-sun suän-ui-shi）」と表記され、ドカムはチベット高原東部に位置しています。

歴史的背景と組織の役割

13世紀半ばにモンゴル帝国がチベットを征服した際、同時に万戸制度を用いた行政管理が導入され、チベット高原は「ドメー」「ドカム」「ウーツァン」の三地区に分割されました。これらの地域はそれぞれ異なる宣慰使司によって管理され、チベット国内では政府組織の重要な一部を形成していました。特に『元史』や他の漢文資料においては、三地区の管理機構を「西番三道宣慰使司」として記録し、それぞれの宣慰使司には特定の行政権限が与えられていました。

チベット語資料『漢蔵史集』によれば、ドカムは「ソクラキャボより以下、黄河河曲以上」という範囲で理解され、その中心地はツォムドサムドゥプ寺とされます。この寺は、ドカムで最も重要な寺院の一つであり、サキャ派のサキャ寺に次ぐ重要性を持っていたとされます。また、ドカム地域にはポンチェンが置かれており、そのポンチェンはゴンジョ地方の出身者であったと言われています。

ポンチェンと宣慰使の関係

ドカムの統治機関に関する考察の中で、ポンチェンと宣慰使という役職については異なる見解が存在しています。ポンチェンは表向きに宣慰使司の長という位置づけを持つ一方で、本来は異なる立場にあったとする意見もあります。特に、両者が持つ職責は時に重なり合うウィニテが見られるため、その役割の明確さには議論が続いています。

ナショナルな権威の認識

1368年には明朝が成立し、洪武帝はチベットに対する軍事的支配を選ばなかったものの、使者を通じて大元ウルス時代の官職を再認しました。1374年にはドカム・ウーツァン地域の僧であるダルマパーラが明朝に降伏することになり、これはチベットにおける統治体制の維持を示す重要な側面です。このような歴史の中で、ドカム地方の宗教的・政治的組織は影響を持ち続けました。

組織構成と位置づけ

吐蕃等路宣慰使司都元帥府の組織構成は、多岐にわたる役職で構成されており、宣慰使や副使、経歴などが含まれています。例えば、宣慰使は4名、同知が2名、副使が1名、さらに捕盜官や鎮撫の役職も存在しました。これらの役職はそれぞれ異なる責任を持ち、チベット内部の管理を行っていました。

さらに、21世紀以降に発見された元代の文書からは、ドカムの宣慰司に関する名称が複数明らかになり、ボンボル招討司やマルカム軍民万戸などの統属関係が示されています。これは、吐蕃等路宣慰使司都元帥府がどのようにして地域社会に根付いたかを知る上で重要な手がかりとなります。

このように、吐蕃等路宣慰使司都元帥府は、モンゴル帝国によるチベット管理の一環として、重要な歴史的役割を果たした行政機構であり、その影響は現代にまで続いていることが分かります。

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