君がいた夏 (曲)

Mr.Childrenのデビューシングル「君がいた夏」：忘れられた夏の情景と、その後の軌跡

1992年、日本の音楽シーンに彗星のごとく現れたMr.Children。そのデビューシングルとして、1992年8月21日にリリースされたのが「君がいた夏」です。ミニアルバム『EVERYTHING』でメジャーデビューを果たした彼らにとって、本作はファーストシングルという位置づけとなります。

当時、まだ無名だったMr.Children。オリコンチャートでの最高順位は69位と振るわず、2024年現在でも彼らのシングルの中で最低順位として記録されています。累計売上枚数も2.2万枚と、現在の彼らの圧倒的な人気からは想像もつかないほど控えめな数字です。しかし、このシングルが後のMr.Childrenの成功を予感させる重要な作品であったことは間違いありません。

表題曲「君がいた夏」は、実はアマチュア時代から存在していた楽曲で、アルバム『EVERYTHING』からのシングルカットです。当時の大阪のFMラジオ局「FM802」ではヘビーローテーションに選定され、徐々に知名度を高めていきました。楽曲タイトルは、アメリカの同名映画にインスパイアされたものですが、アマチュア時代のタイトルは「夏が終わる」だったというエピソードも残されています。ちなみに、後に発表された「夏が終わる 〜夏の日のオマージュ〜」とは直接的な関連性はないとのことです。

桜井和寿は、この曲の舞台について、幼少期から親しんでいた山形県の湯野浜を挙げ、「賑やかだった場所が静まり返る寂しさ、浜辺の景色が胸に残った」と語っています。この経験が、楽曲に深く刻まれたノスタルジックな雰囲気を醸し出していると言えるでしょう。

発売から25年後の2017年、NTTドコモの25周年記念キャンペーンCMに起用されるまで、長らくタイアップがなかったことも特徴的です。このCMによって、再び注目を集め、多くのリスナーにこの名曲が再発見されました。

ミュージックビデオはサイパンで撮影され、監督は信藤三雄氏。ライブ・ビデオ『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』にも収録されており、現在でもYouTubeなどで視聴可能です。

カップリング曲「グッバイ・マイ・グルーミーデイズ」は、後に2ndアルバム『Kind of Love』に収録されました。『EVERYTHING』への収録も検討されたほど、完成度の高い楽曲だったと言われています。

「君がいた夏」は、『EVERYTHING』、『Mr.Children 1992-1995』、『Mr.Children 1992-2002 Thanksgiving 25』といった様々なベストアルバムにも収録されており、彼らの代表曲として長く愛され続けています。デビューシングルとしては物足りない結果に終わったものの、その後、楽曲の持つ魅力が多くの人の心を掴み、現在に至るMr.Childrenの礎を築いた重要な作品と言えるでしょう。初期Mr.Childrenを知る上でも、必聴の1曲です。

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