君だけに愛を (曲)

「君だけに愛を」（きみだけにあいを）は、日本の音楽グループであるザ・タイガースが、1968年1月5日に日本グラモフォンより発表した通算4枚目のシングル作品です。

この楽曲は、当時のグループ・サウンズ（GS）ブームを代表する一曲として広く認識されており、ザ・タイガースのキャリアにおける最も重要な代表曲の一つに数えられています。そのキャッチーなメロディーと演奏は、当時の若者を中心に絶大な支持を集めました。

商業的な成功も目覚ましいものがありました。オリコンが集計した累計売上は約39.7万枚ですが、当時のレコード会社の発表では100万枚を超えるセールスを記録したとされています。この公称ミリオンセラーという記録は、当時のザ・タイガースおよびGSの人気の高さを物語っています。また、2007年にテイチクエンタテインメントからリリースされたコンピレーションCDアルバム「GSフォーエヴァー100」の解説文では、この楽曲がミリオンセールスを記録し、オリコンチャートにおいて最高位である第2位まで上昇する大ヒットとなったことが記されています。

この楽曲を語る上で欠かせないのが、リードボーカルを務めた沢田研二、愛称「ジュリー」によるパフォーマンスです。特に、楽曲のサビの部分で彼がステージから客席のファンに向けて人差し指を突き出すポーズは非常に有名になり、「黄金の人差し指」という異名で呼ばれるようになりました。この情熱的なパフォーマンスは、熱狂的なファンの間で大きな反響を呼び、コンサート会場では失神する観客が続出したという逸話も残されています。

楽曲の制作には、日本の音楽界で著名な顔ぶれが名を連ねています。叙情的な歌詞は橋本淳氏が手掛け、そして楽曲の生命線とも言える作曲と編曲は、後のゲーム音楽の世界でも大きな功績を残すすぎやまこういち氏が担当しました。すぎやま氏によるアレンジは、当時の歌謡曲としては斬新でありながらも、耳に残る力強いメロディーを生み出し、楽曲の魅力を一層引き立てました。

作曲者のすぎやまこういち氏は、この楽曲を自身のコンサートでオーケストラアレンジ版として披露することも多く、その重要なレパートリーの一つとなっています。2008年には、自身が手掛けたヒット曲をオーケストラ演奏で収録したアルバム『君だけに愛を 東京都交響楽団×すぎやまこういちヒット曲集』（すぎやまこういち指揮、東京都交響楽団演奏）をリリースしており、この楽曲はそのアルバムのタイトル曲にも採用されるほど、すぎやま氏にとっても思い入れの深い作品であることが伺えます。

シングル盤には、「君だけに愛を」の他に、「落葉の物語」（らくようのものがたり）がカップリング曲として収録されています。「落葉の物語」も、「君だけに愛を」と同じく、作詞を橋本淳氏、作曲・編曲をすぎやまこういち氏が手掛けています。両曲とも、当時の若者の心情や時代背景を反映した歌詞と、洗練されたサウンドが特徴です。

「君だけに愛を」は、発表から時を経ても色褪せず、多くのアーティストによってカバーされています。主なカバー事例としては、以下のアーティストによるものが挙げられます。

FLYING KIDS（1991年のシングルに収録）
ザ・カーナビーツ（1999年のアルバム『ファースト・アルバム&モア』に収録）
CASCADE（2000年のアルバム『Adrenalin No.5』に収録）
GO!GO!7188（2002年のアルバム『虎の穴』に収録）
* 近田春夫&ハルヲフォン（2008年のアルバム『リメンバー・グループ・サウンズ』に収録）

また、カップリング曲の「落葉の物語」もMi-Keのアルバム『想い出のG.S.九十九里浜』（1991年）でカバーされており、このバージョンにはザ・タイガースのオリジナルメンバーである加橋かつみ氏と森本太郎氏がゲスト参加していることでも知られています。

この楽曲が発表された1968年は、グループ・サウンズが最盛期を迎えていた時代であり、日本のポピュラー音楽史における「1968年の音楽」を語る上で、非常に重要な位置を占める一曲と言えるでしょう。

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