吸血鬼 (江戸川乱歩)

『吸血鬼』

江戸川乱歩の長編探偵小説『吸血鬼』は、1930年9月から1931年3月まで『報知新聞』に連載されていました。この作品は乱歩作品の中でも特に名探偵明智小五郎を主人公とした作品の一つであり、冷酷な犯罪者との対決が描かれています。物語は、主要登場人物である美貌の未亡人、畑柳倭文子を中心に進行します。

主要登場人物

• - 畑柳倭文子（はたやなぎ しずこ） 25歳の美しい未亡人で、6歳の息子を持つ母親です。彼女は多くの男性から求愛され、吸血鬼とされる犯罪者に狙われる存在として危険な目に遭います。
• - 三谷房夫（みたに ふさお） 同じく25歳の美青年で、倭文子の恋人です。彼には過去に何か秘密があるようです。
• - 岡田道彦（おかだ みちひこ） 三谷と倭文子を巡る決闘に敗れ、自らの行方を消します。後に美術家であることが判明します。
• - 畑柳茂（はたやなぎ しげる） 倭文子の6歳の息子で、母同様に吸血鬼に狙われています。
• - 恒川警部（つねかわけいぶ） 警視庁の警部で、通称「鬼警部」として知られています。
• - 明智小五郎（あけち こごろう） 名探偵として多くの難事件を解決しています。
• - 玉村文代（たまむら ふみよ） 明智の助手であり、恋人でもあります。彼女が明智と知り合ったのは魔術師の事件です。
• - 小林少年（こばやししょうねん） 13歳の少年で、明智の優秀な助手でもあります。

あらすじ

物語は、倭文子を巡る三谷と岡田の決闘から始まります。岡田は敗北を喫した後、失踪してしまいます。しかし、彼の失踪後から倭文子の周囲では唇のない怪人が現れ、次々と人々が殺されるという怪事件が発生します。

三谷は事態を重く見て、名探偵明智小五郎に事件の解決を依頼します。明智はその名推理で少しずつ事件の核心に迫っていくものの、真犯人の正体は思いもよらぬものでした。物語が進むにつれて、明智と倭文子、そして三谷の運命が交錯し、さまざまな人間ドラマが展開されます。

その他の情報

本作品は、昭和47年に角川文庫として再版された他、2016年に集英社文庫『明智小五郎事件簿 7』としても収められています。映像化もされており、1950年に公開された映画『氷柱の美女』や、1977年、1992年に放送されたテレビドラマも人気を博しました。また、1999年には金曜エンタテイメントとして再びドラマ化されています。

さらに、2015年にはNHK-FM放送『青春アドベンチャー』でラジオドラマ化されたことも記憶に新しいです。江戸川乱歩の独特な世界観と緻密な推理が織り成される『吸血鬼』は、当時の探偵小説界でも注目された作品です。この作品を通じて、乱歩の魅力が今なお多くの読者に伝わっています。

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