吸血鬼蘇る

『吸血鬼蘇る』：ベラ・ルゴシ主演の第二次世界大戦下のホラー

1943年公開のアメリカ映画『吸血鬼蘇る』(原題:The Return of the Vampire)は、第二次世界大戦下のロンドンを舞台に、過去の事件が現代によみがえる様子を描いたホラー作品です。ベラ・ルゴシ、映画史に名を刻む名優が、再び吸血鬼を演じることで話題を呼びました。

物語：200年前の科学者、そして蘇る悪夢

物語は、第一次世界大戦終結後の1918年、ロンドンのキングス・カレッジから始まります。ソーンダース博士とジェーン・エインズリーは、患者の不可解な症状の原因を突き止めようと奔走します。そして、その原因は200年前に死亡した科学者、アルマン・テスラという吸血鬼であることが判明します。二人はテスラの墓を暴き、心臓に杭を打ち込み、吸血鬼を退治することに成功します。テスラに操られていた狼男アンドレアスも呪縛から解き放たれ、人間に戻りました。
しかし、事件は完全に解決したわけではありませんでした。ソーンダース博士は、幼い孫娘ニッキーの首筋に、吸血鬼に噛まれたような痕があることに気づきます。

23年後、ロンドンはドイツ軍の空襲に晒されていました。空爆により、テスラの墓があった修道院墓地は破壊され、テスラの棺が暴かれます。作業にあたっていた墓守たちは、無意識のうちにテスラの胸に刺さっていた杭を抜いてしまったのです。

蘇ったテスラは、かつてのしもべであったアンドレアスを操り、様々な悪事を働きます。その中には、ナチスの強制収容所から脱走し、英国にたどり着いたブルックナー博士の殺害も含まれていました。そして、テスラはブルックナー博士に成りすまし、大人になったニッキーの前に姿を現します。

ニッキーの異変に気づいたジェーンは、ロンドン警視庁総監フリート卿とともにニッキーの後をつけ、ついにテスラを追い詰めます。しかし、その時、空襲警報が鳴り響き、テスラは逃亡してしまいます。隠れ家へと逃れたテスラでしたが、瀕死のアンドレアスが良心を取り戻し、太陽の下でテスラを倒すことで、事件は解決に向かいます。

製作：ベラ・ルゴシと『ドラキュラ』の影

『吸血鬼蘇る』は、パラマウントのハリー・コーンによる企画から生まれました。当初はベラ・ルゴシを主演に据え、狼男をドラキュラの助手として登場させる『ドラキュラと狼男』というタイトルが検討されていました。しかし、ユニバーサル・ピクチャーズが保有する『ドラキュラ』の著作権問題を懸念した脚本家グリフィン・ジェイは、吸血鬼の名前をアルマン・テスラに変更し、『ロンドンの吸血鬼』というタイトルで脚本を書き直しました。

撮影はわずか16日間で終了し、製作費は138,545ドルでした。この映画の製作経緯には、ユニバーサル・ピクチャーズ作品『魔人ドラキュラ』との関係や、著作権に関する配慮が垣間見えます。映画史家デイヴィッド・J・スカルは、ユニバーサル作品ではないがゆえに、タイトルやキャラクター名を変えたのではないかと推測しています。

批評：注目すべきはベラ・ルゴシか？

1944年1月29日の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、この映画を簡潔に評しました。記事は、映画に興味を持つかどうかは、題名とスター（ベラ・ルゴシ）次第であり、それ以外に書くことはあるだろうか？という皮肉めいた書き出しで始まっています。その後は、簡単なあらすじとスタッフ・キャストの紹介に留まっていました。

キャスト

アルマン・テスラ：ベラ・ルゴシ
ジェーン・エインズリー：フリーダ・イネスコート
ニッキー・ソーンダース：ニナ・フォック
ジョン・ソーンダース：ローランド・ヴァーノ
フレデリック・フリート卿：マイルズ・マンダー
アンドレアス・オブリー：マット・ウィリス
* その他多数

『吸血鬼蘇る』は、第二次世界大戦という暗い時代背景と、ベラ・ルゴシという個性的な俳優の演技が織りなす、独特の雰囲気を持つホラー映画です。ベラ・ルゴシのファンはもちろん、第二次世界大戦期の社会情勢に関心のある方にも、興味深い作品と言えるでしょう。

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