命のバトン 〜赤ちゃん縁組がつなぐ絆〜

命のバトン 〜赤ちゃん縁組がつなぐ絆〜

作品概要

『命のバトン 〜赤ちゃん縁組がつなぐ絆〜』は、日本のNHK名古屋放送局が制作を手がけ、2021年に放送されたテレビドラマです。本作はドキュメンタリードラマという形式を取り、予期せぬ妊娠に直面した一人の若い女性が、苦悩の末に赤ちゃん縁組という道を選ぶまでの心の移り変わりを追います。特に、愛知県が長年にわたり先進的に取り組んできた「愛知方式」と呼ばれる新生児を対象とした養子縁組制度「赤ちゃん縁組」に焦点を当てている点が特徴です。フィクションのドラマパートに加えて、実際の養子縁組に関わる人々の記録映像を織り交ぜることで、命の尊厳や、血縁だけではない多様な家族のあり方について深く問いかけます。

あらすじ

物語の中心となるのは、ごく普通の女子高校生、桜田結です。夢を抱きながら学校生活を送っていた彼女ですが、ある日突然、予期せぬ妊娠という現実に直面します。戸惑い、悩み、誰にも打ち明けられない苦しみを抱える結。そんな彼女が出会うのが、児童相談所の児童福祉司である成瀬千春をはじめとする、様々な立場の人々です。彼女たちは、結の状況に寄り添いながら、赤ちゃん縁組という選択肢について丁寧に説明し、共に考えていきます。結は、自身の将来、生まれてくる命、そして周囲の人々の思いの間で激しく葛藤します。家族や友人、そして児童相談所の専門家との対話を通じて、彼女は命と向き合い、悩み抜いた末に一つの決断を下します。ドラマでは、結の心理的な変化をきめ細やかに描き出すとともに、実際の赤ちゃん縁組の現場を捉えたドキュメント映像が挿入され、リアルな視点からテーマを掘り下げます。

制作背景

本作の企画は、長年にわたり「特別養子縁組」に関する取材を重ねてきた猪瀬美樹ディレクター（NHK名古屋放送局所属）によって立ち上げられました。猪瀬ディレクターは、2015年度に放送され、児童福祉文化賞推薦作品にも選ばれたETV特集『小さき命のバトン』の制作も手がけており、その深い取材経験が本作の礎となっています。企画段階での猪瀬ディレクターによる広範な取材をもとに、大橋守ディレクターがオリジナル脚本を執筆し、ドラマパートの演出も兼任しました。一方、作品にリアリティと重みを与えるドキュメント映像部分は、猪瀬ディレクターが担当しています。このように、二人のディレクターがそれぞれの専門性を活かし、ドラマとドキュメントを高次に融合させた作品となっています。

主要キャスト

桜田 結 演：鈴木梨央
予期せぬ妊娠に悩む17歳の高校生。看護師になる夢を持っています。
成瀬 千春 演：倉科カナ
主人公を支援する児童相談所の児童福祉司。赤ちゃん縁組の専門家です。
桜田 早苗 演：田中美里
結の母親。シングルマザーとして、介護士として働く傍ら、娘の妊娠に向き合います。
伊藤 翔太 演：鈴木宗太郎
結の同級生で、サッカー部のエース。
伊藤 勝也 演：みのすけ
翔太の父であり、弁護士。
和泉 泰三 演：中村靖日
赤ちゃん縁組を希望する夫婦の夫側。文化人類学を研究する大学准教授。
和泉 玲子 演：西山諒
赤ちゃん縁組を希望する夫婦の妻側。
斉藤 信彦 演：平野宏周
成瀬千春の後輩にあたる、児童相談所に配属された愛知県職員。
山口 美鈴 演：伊藤友乃
長年にわたり、親元で暮らせない子どもたちを養育里親として受け入れてきた経験豊かな女性。

主なスタッフ

作・演出：大橋守
ディレクター：猪瀬美樹
ドキュメントパート語り：高山哲哉
音楽：小田朋美
児童福祉考証：萬屋育子
医療考証：上鹿渡和宏
制作統括：江川寛、三鬼一希
* 制作著作：NHK名古屋放送局

放送情報

本作は、NHK BS1にて2021年11月18日に初めて放送されました。その後、同年12月11日にはNHK総合テレビにおいて、愛知県を含む中部7県限定で放送されました。そして、2022年8月30日には改めてNHK総合テレビで全国放送され、より多くの視聴者にそのメッセージが届けられました。

作品の意義

『命のバトン 〜赤ちゃん縁組がつなぐ絆〜』は、表面的な感動に留まらず、赤ちゃん縁組という制度の現実、関わる人々の複雑な感情、そして何よりも小さな命が確かに受け継がれていく尊さを、多角的な視点から描き出しています。困難な状況に置かれた人々への理解を深め、家族の多様性について考えるきっかけを与える作品として、大きな反響を呼びました。

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