和久田康雄

和久田康雄：日本の鉄道研究を牽引した碩学

1934年3月1日、栃木県に生まれた和久田康雄氏は、日本の鉄道研究において卓越した功績を残した人物です。東京大学法学部卒業後、運輸省に入省。その後、日本民営鉄道協会常務理事、日本鉄道建設公団理事、JTBトラベルカレッジ校長などを歴任し、幅広い分野で活躍しました。2017年4月13日、83歳でその生涯を閉じました。

学術研究と行政経験の融合

和久田氏は、東京大学在学中には東大鉄道研究会を組織するなど、早くから鉄道への関心を示していました。運輸省勤務時代は、本省に加え、福岡陸運局や仙台陸運局など各地の機関に勤務し、現場での経験を積みました。この経験は、後の研究活動に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。行政機関での勤務と並行して、学術研究にも積極的に取り組み、数々の著作を発表しました。

多岐にわたる著作活動

和久田氏の著作は、日本の私鉄史研究に大きな足跡を残しています。代表的な著書として、『資料・日本の私鉄』『日本の私鉄』『日本の地下鉄』など、私鉄を中心とした研究書を多数出版しました。これらの著作は、詳細な資料と明解な分析を特徴とし、日本の鉄道史研究に欠かせない重要な資料となっています。さらに、『私鉄百年史 人物と事件でつづる』では、私鉄の歴史を人物や出来事を中心に分かりやすく解説し、一般読者にも広く親しまれました。

和久田氏は、私鉄だけでなく、鉄道法規や路面電車についても造詣が深く、それらに関する著書も多数執筆しました。『やさしい鉄道の法規 JRと私鉄の実例』は、複雑な鉄道法規を分かりやすく解説した入門書として高く評価されています。『路面電車 ライトレールをめざして』では、路面電車の将来展望について鋭い洞察を示しています。

国際的な視野と多様な協働

和久田氏の研究は、日本国内にとどまりませんでした。広田良輔氏との共編著書である『アジアの鉄道 18国最新事情』『南北アメリカの鉄道 15国最新事情』など、海外の鉄道事情についても詳細な情報を提供するなど、国際的な視野も持っていました。

また、多くの共編著書や翻訳書にも携わっています。『鉄道の世界史』、『世界の駅・日本の駅』、『日本の鉄道をつくった人たち』といった、日本の鉄道史を多角的に捉えた共著は、日本の鉄道研究における和久田氏の存在感を示しています。さらに、海外の鉄道に関する書籍の翻訳にも取り組み、日本の鉄道研究に国際的な視点を取り入れることに貢献しました。

鉄道研究への貢献

和久田氏は、日本交通学会、鉄道史学会、赤門鉄路クラブの会員として、活発な研究活動を行い、その成果を学会や論文を通して発表しました。また、「鉄道ピクトリアル」編集委員を務め、鉄道研究の普及にも貢献しました。

和久田康雄氏の生涯は、学術研究と行政経験の融合、多岐にわたる著作活動、国際的な視野、そして他者との協働によって日本の鉄道研究を大きく発展させた、輝かしい軌跡でした。その功績は、日本の鉄道史研究において長く記憶されることでしょう。

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