和田将宏
和田 将宏（わだ まさひろ）は、1946年10月1日、奈良県に生まれ、大阪市西成区花園で育った元モーターサイクル・ロードレーサーです。その長いキャリアの中で、「ミスターカワサキ」、「ミスターヒロ」、「ヒロさん」、「ボス」など、多くの愛称で親しまれました。
和田氏がオートバイレースの世界に足を踏み入れたのは、16歳の頃。開業間もない鈴鹿サーキットの看板に触発され、自身のホンダCBで走行したことが始まりでした。その際、好タイムを記録したことでホンダの関係者の目に留まり、レース用車両であるCR93を駆る機会を得ます。このCR93で当時のトップレベルに迫るラップタイムを刻み、ホンダファクトリーの注目を集めました。日本モーターサイクルスポーツ協会（MFJ）が設立されたばかりの時期に、和田氏はホンダのCR72やCR77といったマシンで活躍するライダーとして起用されます。
18歳でオートバイレーサーとして立つことを決意し、上京。千葉県で住み込みの整備工として経験を積みながら、「ホンダテクニカルスポーツ」の一員としてMFJジュニア250ccクラスに参戦しました。第3回MFJロードレース鈴鹿では、ホンダCB250（CB72）を駆り優勝を飾っています。1965年の日本GPに併催されたジュニアクラスで使用したCB72は、後のヨシムラ創業者である吉村秀雄氏がエンジンチューンを手がけたマシンでしたが、和田氏の圧倒的な速さを見た本田宗一郎氏がその性能に驚嘆したという逸話が残されています。当時のレース界には、鈴鹿サーキットと富士スピードウェイの間に対立構造があり、ホンダは所属ライダーに鈴鹿でのレース参戦を優先させる傾向がありました。和田氏は速いライバルが集まる富士でのレース出場を熱望していましたが、ホンダ社内には許可が出しにくい雰囲気がありました。自らを高めるためには、トップレベルの場で競うことが不可欠という信念を持つ和田氏は、エンジン担当だった吉村氏からも富士参戦を強く後押しされ、会社の意向に反して富士でのレース出場を決行します。この出来事が契機となり、和田氏はホンダファクトリーを離れることとなりました。
1967年には、片山義美氏率いる「神戸木の実レーシング」へ移籍し、カワサキのワークスライダーとして新たなキャリアをスタートさせます。1968年には、カワサキA1Rを駆り、全日本ロードレース選手権セニア250ccクラスで見事チャンピオンを獲得しました。また、大排気量の750ccクラスでは、ホンダの隅谷守男氏と数々の激しいバトルを繰り広げます。転倒によるリタイヤか、あるいは勝利かと、結果が明快な和田氏の果敢なレーススタイルは、カワサキのイメージとされる「男らしさ」を体現しており、転倒で骨折してもすぐに復帰するその姿は、後に「男カワサキ」という言葉の由来の一つとなったのではないかと、当時のチームグリーン監督であった平井稔男氏は回想しています。
国際舞台への挑戦も積極的で、1973年にはカワサキH2RでアメリカAMAのデイトナ200に参戦。1977年にはヨーロッパへ遠征し、世界グランプリ250ccクラスで最高4位を記録しています。この頃、自身のレースに対する信条について、「他者が達成したタイムは必ず自分にも出せると信じ、コース上ではわずか0.1秒でも常に自己ベスト更新を目指す。何事にも相手を凌駕する気概で挑むのが私の信念である」と語っており、その飽くなき探求心と闘争心が垣間見えます。
1978年に第一回大会が開催された鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、主要なライバル勢が1000ccクラスの4ストロークマシンで参戦する中、和田氏は清原明彦氏とコンビを組み、2ストロークのKR350で挑みました。予選では強力なライバルマシン勢を抑えて5位に入るなど、観衆を大いに沸かせました。1981年から1983年にかけてはモリワキのライダーとして鈴鹿8耐に参戦し、カワサキZ系エンジンをチューンした「モリワキ・モンスター」を駆って挑戦を続けています。その後も、プライベーターとして1988年大会まで鈴鹿8耐に参戦しました。
実業家としての一面も持ち合わせ、カワサキワークス入りした1968年には、大阪市内にスナック「デュエット」を開店しました。MFJライセンス提示による割引サービスなどで話題を集めています。さらに、大阪府松原市を拠点にライダー用品店「ミスターヒロ」を経営し、自ら社長を務めました。特に、自身のこだわりを反映させたオリジナルのライディンググローブは多くのユーザーから長年支持を得ていましたが、惜しまれつつ2010年4月に閉店しています。世界グランプリ王者となった片山敬済氏も、和田氏の生成り革グローブを気に入り、これをベースに手首周りなどをアレンジしたものをGPの舞台で長く愛用しました。
現役レーサーを引退した後も、和田氏は日本のオートバイ界への貢献を続けています。鈴鹿レーシングスクール（SRS）の二輪部門講師として若手育成に携わったほか、MFJの役員や鈴鹿サンデーロードレースの競技委員などを歴任しています。長年の経験と情熱を次世代に伝え、日本のロードレース発展に尽力し続けている人物です。
主な戦績
1968年：全日本ロードレース選手権 セニア250ccクラス チャンピオン
1977年：ロードレース世界選手権 250ccクラス 最高4位
（※上記は入力情報に基づく主な戦績であり、詳細なレース記録は割愛しています。）
和田氏がオートバイレースの世界に足を踏み入れたのは、16歳の頃。開業間もない鈴鹿サーキットの看板に触発され、自身のホンダCBで走行したことが始まりでした。その際、好タイムを記録したことでホンダの関係者の目に留まり、レース用車両であるCR93を駆る機会を得ます。このCR93で当時のトップレベルに迫るラップタイムを刻み、ホンダファクトリーの注目を集めました。日本モーターサイクルスポーツ協会（MFJ）が設立されたばかりの時期に、和田氏はホンダのCR72やCR77といったマシンで活躍するライダーとして起用されます。
18歳でオートバイレーサーとして立つことを決意し、上京。千葉県で住み込みの整備工として経験を積みながら、「ホンダテクニカルスポーツ」の一員としてMFJジュニア250ccクラスに参戦しました。第3回MFJロードレース鈴鹿では、ホンダCB250（CB72）を駆り優勝を飾っています。1965年の日本GPに併催されたジュニアクラスで使用したCB72は、後のヨシムラ創業者である吉村秀雄氏がエンジンチューンを手がけたマシンでしたが、和田氏の圧倒的な速さを見た本田宗一郎氏がその性能に驚嘆したという逸話が残されています。当時のレース界には、鈴鹿サーキットと富士スピードウェイの間に対立構造があり、ホンダは所属ライダーに鈴鹿でのレース参戦を優先させる傾向がありました。和田氏は速いライバルが集まる富士でのレース出場を熱望していましたが、ホンダ社内には許可が出しにくい雰囲気がありました。自らを高めるためには、トップレベルの場で競うことが不可欠という信念を持つ和田氏は、エンジン担当だった吉村氏からも富士参戦を強く後押しされ、会社の意向に反して富士でのレース出場を決行します。この出来事が契機となり、和田氏はホンダファクトリーを離れることとなりました。
1967年には、片山義美氏率いる「神戸木の実レーシング」へ移籍し、カワサキのワークスライダーとして新たなキャリアをスタートさせます。1968年には、カワサキA1Rを駆り、全日本ロードレース選手権セニア250ccクラスで見事チャンピオンを獲得しました。また、大排気量の750ccクラスでは、ホンダの隅谷守男氏と数々の激しいバトルを繰り広げます。転倒によるリタイヤか、あるいは勝利かと、結果が明快な和田氏の果敢なレーススタイルは、カワサキのイメージとされる「男らしさ」を体現しており、転倒で骨折してもすぐに復帰するその姿は、後に「男カワサキ」という言葉の由来の一つとなったのではないかと、当時のチームグリーン監督であった平井稔男氏は回想しています。
国際舞台への挑戦も積極的で、1973年にはカワサキH2RでアメリカAMAのデイトナ200に参戦。1977年にはヨーロッパへ遠征し、世界グランプリ250ccクラスで最高4位を記録しています。この頃、自身のレースに対する信条について、「他者が達成したタイムは必ず自分にも出せると信じ、コース上ではわずか0.1秒でも常に自己ベスト更新を目指す。何事にも相手を凌駕する気概で挑むのが私の信念である」と語っており、その飽くなき探求心と闘争心が垣間見えます。
1978年に第一回大会が開催された鈴鹿8時間耐久ロードレースでは、主要なライバル勢が1000ccクラスの4ストロークマシンで参戦する中、和田氏は清原明彦氏とコンビを組み、2ストロークのKR350で挑みました。予選では強力なライバルマシン勢を抑えて5位に入るなど、観衆を大いに沸かせました。1981年から1983年にかけてはモリワキのライダーとして鈴鹿8耐に参戦し、カワサキZ系エンジンをチューンした「モリワキ・モンスター」を駆って挑戦を続けています。その後も、プライベーターとして1988年大会まで鈴鹿8耐に参戦しました。
実業家としての一面も持ち合わせ、カワサキワークス入りした1968年には、大阪市内にスナック「デュエット」を開店しました。MFJライセンス提示による割引サービスなどで話題を集めています。さらに、大阪府松原市を拠点にライダー用品店「ミスターヒロ」を経営し、自ら社長を務めました。特に、自身のこだわりを反映させたオリジナルのライディンググローブは多くのユーザーから長年支持を得ていましたが、惜しまれつつ2010年4月に閉店しています。世界グランプリ王者となった片山敬済氏も、和田氏の生成り革グローブを気に入り、これをベースに手首周りなどをアレンジしたものをGPの舞台で長く愛用しました。
現役レーサーを引退した後も、和田氏は日本のオートバイ界への貢献を続けています。鈴鹿レーシングスクール（SRS）の二輪部門講師として若手育成に携わったほか、MFJの役員や鈴鹿サンデーロードレースの競技委員などを歴任しています。長年の経験と情熱を次世代に伝え、日本のロードレース発展に尽力し続けている人物です。
主な戦績
1968年：全日本ロードレース選手権 セニア250ccクラス チャンピオン
1977年：ロードレース世界選手権 250ccクラス 最高4位
（※上記は入力情報に基づく主な戦績であり、詳細なレース記録は割愛しています。）
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