和田精

和田 精（わだ せい）

和田精は1893年に千葉県で生まれ、音響演出家として日本の演劇界に多大な影響を与えた人物です。彼は、日本における音響効果のパイオニアとして知られ、築地小劇場の創設メンバーの一人としても活躍しました。彼は息子にイラストレーターの和田誠を持ち、その嫁である平野レミは料理家として著名です。また、孫はロックバンドTRICERATOPSのメンバー和田唱で、彼の妻は女優の上野樹里です。

経歴

和田精は東京高等師範学校附属中学校に在籍中、多くの著名人と同級生でした。1915年には東京高等工業学校を卒業し、石川県の日本硬質陶器に就職しましたが、4年後に東京に戻り東京電気（現・東芝）に転職。ここで照明技術者としての経験を積む一方、舞台模型研究所に参加し、模型作りにも興味を深めました。

彼は新たに設立された「舞台の会」に関与し、千田是也らとともに演劇の研究活動を行いました。この時期、彼の運命を変える出来事がありました。1920年、帝劇でのワーグナーの楽劇『タンホイザー』のパンフレットに誤って「照明：和田精」と記載されたことから、彼は本格的に演劇界へ進出したのです。

その後、1921年には明治座での市川左団次一座公演『俊寛』において、和田は音響装置の考案と制作に関与しました。この公演は、日本における音響効果の始まりとされています。1924年に築地小劇場が設立された際には、彼はそのメンバーとして活動を開始し、演劇の裏方のみならず、舞台解説者としても活躍しました。

和田が音響効果を手掛けた作品には、ラジオドラマの先駆けとも言える『炭坑の中』（1925年）や、トーキー映画第1号の『黎明』（1927年）などがあります。特に、炭坑の中での音響効果の実績は高く評価され、1930年には関西のNHKでスタジオディレクターとして迎えられました。

後年の業績と影響

彼の活動は、第2次世界大戦中にも続きましたが、1944年には思想的な理由で解雇され、その後失業生活を余儀なくされました。しかし、彼は1946年に学生演劇の演出を指導し、1951年には新日本放送に招かれ、ラジオやテレビドラマの演出を担当しました。この時期、彼は3年連続で文部大臣賞を受賞し、「ラジオの神様」と称されるまでになりました。

晩年には現役を退き、1970年に脳軟化症のために亡くなりますが、彼の音響効果に関する貢献は日本の舞台芸術において今も評価されています。和田精の革新的なアプローチは、彼の名を演劇の歴史に刻むこととなりました。彼の功績は、今後の世代にも影響を与え続けることでしょう。

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