築地小劇場

築地小劇場について

築地小劇場（つきじしょうげきじょう）は、1924年6月13日に土方与志と小山内薫により設立された新劇専用の常設劇場です。また、この劇場は創設当初から付属の劇団をも意味していました。東京府東京市京橋区築地に位置し、現在の東京都中央区築地2丁目11番地にあたります。この場所には、劇場の歴史を記念する碑も建立されています。

劇場の面積は約100坪で、平屋建ての設計となっており、客席数は400から500席に達します。特筆すべきは、当劇場が電気を用いた世界初の照明室を備えていた点で、舞台の演劇において先進的な設備を持つ場所でした。特に、クッペル・ホリゾントと呼ばれるドーム型の湾曲壁を備えた舞台は、演劇に独特の空間を提供しました。また、様々な実験的な演劇が行える場所としても利用され、多くの演劇愛好者から支持を受けました。

劇場の外壁には「ぶどうのマーク」があり、これは土方与志が選んだものとされています。これは「バッカスの神」の象徴とも言われ、演劇の新しい可能性を示し続けました。創立にあたっては、仲間たちと共に新しい演劇の形を模索するという強い意気込みがありました。

概要

開場の公演は1924年の6月14日とされ、当日は土方の演出によるラインハルト・ゲーリングの「海戦」、チェーホフの「白鳥の歌」、マゾオの「休みの日」が上演されました。しかし、この初公演では、小山内薫の日本の既存の戯曲に対する批判的な発言が物議を醸し、文壇からの反響がありました。それ以降、チェーホフやゴーリキーといった海外演劇の翻訳劇が多く上演され、次第に多くの観客を引きつけていくことになりました。

1926年からは「前衛座」といったプロレタリア劇団による上演も行われ、これにより築地小劇場は新劇の重要な拠点として位置づけられるようになりました。しかし、1928年に小山内が急逝した後、劇団内での権力争いが激化し、多くの劇団員が新たな劇団を結成しました。土方与志を支持する者たちは新築地劇団を設立し、新たな活動を開始しました。

演劇運動の軌跡

この劇場は、戦争前後の日本における新しい演劇の流れにおいて、重要な役割を果たしました。特に1930年代には左翼劇団が活動の中心となり、社会情勢を反映した演劇が上演されました。しかし、戦時中の厳しい管理体制の中での上演活動は、1940年の検挙や1944年の演劇公演の終了へとつながり、最終的には1945年の東京大空襲で劇場は焼失しました。

エピソード

築地小劇場は、演劇界だけでなく、日本の近代史の中でも重要な場所です。特に、小林多喜二の労農葬がここで行われたことや、日本初のラジオドラマ『炭鉱の中』が関連している点でも有名です。これは日本の演劇とメディアの歴史においても重要な出来事と言えるでしょう。

総じて、築地小劇場は日本の新劇運動において革新的な場であり、その精神は今なお多くの演劇人や観客に引き継がれています。

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