哀しみのアダージョ

哀しみのアダージョ（彼と彼女のソネット）

「哀しみのアダージョ（彼と彼女のソネット）」は、フランスの女性歌手エルザが1986年にリリースしたシングルです。原題は「T'en va pas（行かないで）」であり、映画『悲しみのヴァイオリン』の主題歌として制作されました。

楽曲の背景

当時13歳だったエルザは、映画に出演すると同時に、監督の薦めで主題歌を歌うことになりました。この曲は、自分や母親を見捨てて出て行こうとする父親に「行かないで」と懇願する、切ない心情を描いた歌です。

フランスでは、シングルとして発売されると、瞬く間にヒットチャートの首位を独走し、8週間連続1位という記録を打ち立てました。売り上げは130万枚を突破し、エルザの名をフランス音楽史に刻みました。

日本での展開

日本では1987年に「哀しみのアダージョ」という邦題で発売され、その後1994年の再発時に「哀しみのアダージョ（彼と彼女のソネット）」という副題が追加されました。この副題は、原田知世が大貫妙子の日本語詞でカバーした際のタイトルに由来します。エルザ自身による英語版のタイトルは「Papa please don't go」となっています。

1989年にリリースされた1枚目のアルバムをはじめ、その後のレギュラー・アルバムには本曲は収録されず、シングル自体も廃盤になったため、長らく入手困難な状態が続いていました。しかし、1994年のシングル再発売や映画のサウンドトラック発売、そして1997年のベスト・アルバム『哀しみのアダージョ～ベスト・オブ・エルザ』の発売により、現在では容易に入手できるようになっています。このベスト盤には、英語版や1997年リミックス・バージョンも収録されています。

日本では、ジーンズ・メーカーのエドウインが女性向けブランド「サムシング」のCMで使用したことでも知られています。このCMを通じて、多くの日本人がこの曲の存在を知り、その美しいメロディと切ない歌詞に心を奪われました。

原田知世によるカバー

1987年7月1日、原田知世が大貫妙子の日本語詞により、「彼と彼女のソネット」というタイトルでこの曲をカバーしました。編曲は後藤次利が担当しています。原田の透明感のある歌声と、大貫の繊細な日本語詞が融合し、原曲とはまた違った魅力を持つカバー曲として、多くの人々に愛されています。

1994年7月21日には、原語歌詞によるカバーも発表しています（シングル『T’EN VA PAS』）。この曲は、フジテレビの深夜番組「文學ト云フ事」のエンディングテーマとして使用されました。

大貫妙子自身も、自身の日本語詞により、同年のアルバム『A Slice of Life』でこの曲をカバーしています。ただし、歌詞の一部が原田盤とは異なっています。

チャート成績

原田知世の「彼と彼女のソネット」は、オリコンチャートに6週間登場し、最高順位は週間19位、累計2.6万枚のセールスを記録しました。

その他のカバー

「哀しみのアダージョ（彼と彼女のソネット）」は、数多くのアーティストによってカバーされています。以下に主なカバー作品を記載します。

富沢聖子：「彼と彼女のソネット」（アルバム『星の涙』(1987年)）
ピエール・ポルト：「哀愁のアダージョ」（アルバム『フライデーナイト・ファンタジー』(1994年)）
ナタリー：「哀愁のアダージョ」（1994年。エルザ盤のCD化より先に発売され、「サムシング」CMソングのオリジナル版であるかのようなコピーがつけられていた）
CREOLE：「彼と彼女のソネット」（アルバム『彼と彼女のソネット』(1994年)）
T. YUMI：「哀愁のアダージョ 〜彼と彼女のソネット」（オムニバスアルバム『フレンチ・リップス』(1994年)）
宮村優子：「彼と彼女のソネット」（アルバム『不意打ち』(1997年)）
長谷川恵里：「彼と彼女のソネット」（アルバム『Flavor』(2002年)）
坂本美雨：「彼と彼女のソネット」（シングル『THE NEVER ENDING STORY』(2005年)）
Sana：「T’en va pas」（アルバム『蜜月 〜honey moon〜』(2005年)）
一十三十一：「彼と彼女のソネット」（オムニバスアルバム『Pure Voice 〜J-COVER〜』(2008年)）
* プリシラ・アーン：「哀しみのアダージョ(T’en va pas)」（アルバム『ナチュラル・カラーズ』(2012年)）

「哀しみのアダージョ（彼と彼女のソネット）」は、時代を超えて愛される名曲として、これからも多くの人々の心に響き続けるでしょう。

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