唄子・啓助のおもろい夫婦

『唄子・啓助のおもろい夫婦』は、1969年4月6日から1985年3月27日までフジテレビ系列で放送された長寿トーク番組です。司会は、京唄子と鳳啓助の軽妙な掛け合いが魅力で、16年間多くの視聴者から愛されました。

番組の最大の特徴は、視聴者参加型の公開番組だった点です。収録は、東京都内のサテライトスタジオから始まり、後に山野ホールに移されました。毎回、2組の熟年夫婦を招き、馴れ初めから結婚に至るまでのエピソードや、日々の生活における喜びや悩みなどを、唄子と啓助が優しく、そして時にユーモラスにインタビューしていました。

夫婦の苦労話には、唄子が涙を流す場面も少なくありませんでした。特に、戦中・戦後の混乱期に結婚したため、結婚式を挙げられなかった夫婦を招いて「合同結婚式」を企画した回は、多くの視聴者の心に深く響きました。

出演した夫婦には、番組終了後に豪華なプレゼントが贈られました。一組には、東亜国内航空（現在の日本航空）による国内旅行、もう一組には、ナショナル（現在のPanasonic）のホームビデオと番組出演テープが贈呈されました。これらのプレゼントは、番組の人気と視聴者への感謝の気持ちを表すものでした。

エンディングでは、農村の未舗装道路で夫が荷車を引く、妻が荷台で赤ん坊に授乳する映像が流されました。これは、当時の人々の生活風景を象徴的に表現したもので、多くの視聴者に郷愁を呼び起こしました。さらに、鳳啓助が書き下ろした詩がテロップで表示される演出も、番組の独特な雰囲気を作り出していました。

放送時間は、当初は日曜日の夜でしたが、放送期間中に何度か変更されました。1969年4月6日から1970年9月までは日曜22時15分から23時、1970年10月から1971年9月26日までは22時15分から22時45分、1971年10月3日から1983年9月25日までは23時00分から23時30分と変遷しました。その後、深夜枠に移動し、最終的には水曜日の深夜に放送されるようになりました。

全国のフジテレビ系列局で放送されましたが、放送時間や曜日、放送枠は局によって異なっていました。一部の局では、ローカルセールス枠として独自の放送形態を取っていました。番組は1985年3月いっぱいで終了し、16年間の歴史に幕を閉じました。

1974年7月7日に行われた第10回参議院議員通常選挙の投票日には、『唄子・啓助のおもろい選挙速報』と題して、放送時間を拡大し、選挙速報と番組を連動させた特別な放送も行われました。

2009年に放送されたフジテレビ開局50周年記念番組『フジテレビ50ッスth!』では、この番組が特集され、番組で使用されていた暖簾などが紹介されました。番組で唄子が結婚してはいけない男性として挙げた「女癖の悪い男」と、司会の明石家さんまが挙げた「女優」という発言は、視聴者の間で話題となりました。

『唄子・啓助のおもろい夫婦』は、単なるトーク番組ではなく、時代の変化と共に視聴者の生活に寄り添い、温かい感動と笑いを届けた、まさに日本のテレビ史に残る名番組でした。その16年間の放送は、日本の社会や文化、そして人々の生活の変化を映し出す鏡でもありました。

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