商用オフザシェルフ

商用オフザシェルフ（COTS）とは

商用オフザシェルフ（Commercial Off-The-Shelf、COTS）とは、一般市場で販売・リースされているソフトウェア製品やハードウェア製品を指します。特定の情報システム向けに独自開発するのではなく、既製品を活用するアプローチです。COTSは、コスト削減や開発期間の短縮を目的として、企業や政府機関で広く採用されています。

COTS採用の背景とメリット

情報システムの開発や政府向けの開発は、コストがかさむ傾向があります。そのため、COTSの導入は、開発・調達・保守にかかる費用を大幅に削減する有効な手段とされています。また、既製品をそのまま利用することで、開発期間を短縮することも可能です。ソフトウェア開発費が増大し続ける現代において、COTSのメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

COTSの課題と注意点

COTSソフトウェアは、仕様がユーザーの制御下にないため、予期せぬ仕様変更のリスクがあります。そのため、導入をためらう企業や組織も存在します。また、COTS製品を複数組み合わせる場合、システム全体の統合に手間と費用がかかる可能性があります。近年では、COTSが銀の弾丸（完璧な解決法）とは考えられなくなっており、導入には慎重な検討が必要となっています。ただし、オープンソースソフトウェアのように、ソースコードが入手可能なCOTSの場合は、制御不能になるリスクは低いと言えます。

COTSの軍事利用

近年、COTSは軍事分野でも注目されています。特に兵器開発においては、開発コストや期間の削減を目的として、COTSの採用が進んでいます。例えば、イギリス海軍のアスチュート級原子力潜水艦では、コンピュータのハードウェアに市販のCPUやメモリ、OSが使われています。もちろん、ミサイルや魚雷の発射などの制御ソフトウェアは軍用に開発されたものですが、ハードウェアをCOTSで代替することで、コストと期間を大幅に削減することに成功しています。

日本の自衛隊でも、車両開発においてCOTSの恩恵を受けています。例えば、74式特大型トラックは三菱ふそうのトラックをベースに改造されており、96式装輪装甲車も三菱ふそうのエンジンをベースにしたエンジンを採用しています。また、10式戦車では、COTSを活用することで、90式戦車よりもコストを抑えることに成功しています。情報システムなどの他の装備品においても、民生品（COTS品）の導入が進んでいます。

デュアルユースとCOTS

昔から、民生用のトラックや四輪駆動車を迷彩塗装したり、ボディを補強して軍用車両として使うことが行われてきました。このように、民生品と軍用品の両方で使用されるものをデュアルユースと呼びます。COTSの導入は、デュアルユースの観点からも重要ですが、武器輸出規制との兼ね合いも考慮する必要があります。

まとめ

COTSは、コスト削減や開発期間の短縮に有効な手段ですが、仕様変更のリスクや統合の課題も存在します。導入にあたっては、これらの点を十分に考慮する必要があります。軍事分野では、COTSの採用が拡大しており、兵器開発におけるコスト削減に貢献しています。今後、さらに多くの分野でCOTSの活用が進むと予想されます。

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