96式装輪装甲車

96式装輪装甲車の概要と特性

96式装輪装甲車（タイプ96）は、陸上自衛隊が採用している装輪型の人員輸送車両であり、小松製作所により1992年から開発が始まり、1996年に制式化された。これは陸自における初の装輪装甲人員輸送車でもあり、与えられた愛称は「クーガー」である。実際には「96」、「96W」のような略称で呼ばれることが一般的である。

開発と配備の歴史

96式装輪装甲車は、富士学校装備開発実験隊と富士教導団による部隊実験を経て、1998年に北海道の名寄駐屯地に配備される。その後、調達は進み、平成27年度までに381両が導入された。調達価格は1両あたり1億円を超える。アスファルトなどの整備された道路での運用が簡便で、自然災害時の派遣やイラクでの人道支援活動など様々な場面で使用されている。

構造と技術的特徴

96式は、装輪車両としての特性を有し、8輪のパンク耐性コンバットタイヤを装備し、全てのタイヤの空気圧が脱気されても走行を続けることができる。この中央タイヤ圧システム（CTIS）により、様々な地形に応じた運用が可能である。通常は第3軸と第4軸が駆動するが、全軸駆動に切り替えも可能、そして旋回は前方の第1軸と第2軸で行う。車体は圧延鋼板の溶接構造を持ち、基本的な防御力は小銃弾や砲弾破片には耐えるが、大口径の重機関銃に対しては限界がある。

乗員の配置と設備

乗員は全体で12人まで運用でき、前から見て操縦士席、銃手席、分隊長兼車長席、そして後部には向かい合わせのベンチシートが配置されている。また、特殊な消火装置やNBC兵器（核・生物・化学兵器）からの防護装置も備わっており、万が一の事態に備えた設計となっている。

武装とバリエーション

96式には「A型」と「B型」の2つのバリエーションがあり、A型は40mm自動てき弾銃を、B型は12.7mm重機関銃M2を装備している。武装の互換性はないが、乗員は外に身を乗り出して操作が可能で、手回しハンドルや電気作動による機械式引き金を使用して動作する仕組みになっている。また、煙弾発射機も装備している。A型とB型は生産比率が異なり、約10対1の割合で生産されている。

改良型と今後の展望

イラク派遣の際にはB型に改良が加えられ、追加装甲やワイヤーカッターが装備され、防護力が向上した。さらに、平成20年度には「96式装輪装甲車（II型）」として改良されたバージョンが調達され、ゲリラの武装攻撃への対応力を持つように設計された。

次期装輪装甲車の導入

96式装輪装甲車の後継となる車両の開発が2014年から開始される予定だったが、2018年に開発が中止され、次期装輪装甲車の候補地としてパトリアAMVが選定された。今後、パトリア社は最新世代の装甲車を日本で製造する計画が進行中である。

メディアへの登場

映画やアニメにも多く登場しており、代表的な作品には『ゴジラシリーズ』や『戦国自衛隊1549』がある。これらの作品では、装甲車としての役割や戦闘シーンの重要な要素として描かれている。特に、実際の自衛隊車両が撮影に使用されることが多い。

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