問題ないね。

オリックス・ブレーブスが使用した応援歌。

概要

「問題ないね。」は、1989年から1990年まで、日本プロ野球のパシフィック・リーグに所属していたオリックス・ブレーブスの公式応援歌として採用された楽曲です。作詞は著名な作詞家である秋元康、作曲はタケカワユキヒデ、編曲は外山和彦がそれぞれ手掛けました。この曲は、その制作背景やプロモーション戦略において、従来のプロ野球応援歌とは異なるユニークな特徴を持っていました。

制作の背景

この楽曲は、阪急電鉄が所有していたプロ野球球団、阪急ブレーブスが1988年のシーズン終了後にオリエント・リース株式会社（翌年にオリックス株式会社へ社名変更）へ売却されたことに伴い、球団名がオリックス・ブレーブスとなった1989年に新たに制作されました。当時のオリックスは、主に法人向けのリース事業を展開していましたが、事業領域を個人消費者向けへと拡大しようとしていました。球団の獲得は、新たな顧客層に対する企業ブランドの認知度を高める重要な戦略の一環であり、従来の「野球通が好むチーム」というイメージから脱却し、女性や子供など、より幅広い層からの関心を獲得する必要があったのです。

独自のプロモーション戦略

オリックスは、この目標を達成するために独創的なプロモーション戦略を展開しました。秋元康やタケカワユキヒデからの助言を受け、応援歌を歌い、踊る小学生によるグループを結成する計画が立てられました。テレビプロダクションなどを通じてオーディションが行われ、選ばれた30人の小学生は「オリックス・キッズ」と名付けられました。彼らは、単に応援歌を歌うだけでなく、試合中にパフォーマンスを行ったり、テレビ番組に出演したり、さらにはCDデビューも果たしました。この戦略は、試合展開に合わせて「オリックス・キッズ」が歌唱することで、野球の試合そのものをエンタテインメントとして演出し、より多くの人々、特にファミリー層にアピールすることを意図していました。

楽曲と歌詞の特徴

応援歌の歌詞は一般から公募されましたが、最終的に選考委員会は「該当作無し」と判断しました。結果として、選考委員であった秋元康が補作のために準備していた歌詞がそのまま採用されることになりました。

楽曲自体は、児童合唱による明るく親しみやすいポップス調に仕上がっています。これは、同じく1989年に誕生した福岡ダイエーホークスの新しい球団歌『ダイヤモンドの鷹』（作詞：阿久悠、作曲：宇崎竜童）がロック調であったことと比較すると、当時のプロ野球界における球団歌としては異彩を放つ存在でした。

歌詞の中で最も特徴的なのは、「野球の平和」を守るために戦う、という独特のテーマです。このような平和への願いを込めた歌詞のコンセプトは、1974年に発表された日本ハムファイターズの公式応援歌「それゆけぼくらのファイターズ」にも先例が見られます。

発表形態とジャケット

「問題ないね。」の楽曲は、一般の音楽流通ルートでは販売されませんでした。主に、本拠地であった西宮球場の売店でのCDシングル販売や、阪急西宮北口駅や三宮駅などでのプロモーション用カセットテープの配布といった形で提供されました。CDジャケットには、阪急ブレーブス時代から引き継がれたマスコットキャラクターであるブレービーと、「オリックス・キッズ」の子供たちが共にデザインされていました。

歌詞に対する批評

音楽評論家の二宮清純氏は、具体的な曲名は挙げなかったものの、秋元康が作詞したオリックスの球団歌について論評し、その歌詞に含まれる「平和を守るために戦う」といった表現に対して批判的な見解を示しました。氏は、こうした歌詞は無意味に好戦的であり、自球団を一方的に正義と位置づける発想は独善的であると指摘しています。この批評には、日本ハムファイターズが創立された時期が阪急ブレーブスの黄金時代であったのに対し、オリックス・ブレーブスが誕生した時期は西武ライオンズが黄金時代を迎えていたという、当時のプロ野球界の勢力図も影響していたのかもしれません。

短命に終わった経緯

「問題ないね。」は、わずか2年間という短い期間のみ使用され、その後廃止されました。これは、1991年にオリックス球団が本拠地を西宮球場からグリーンスタジアム神戸へ移転し、同時に球団名も「オリックス・ブルーウェーブ」へ変更したためです。球団の新たなスタートに合わせて、応援歌も一新されることになり、新たに『輝け潮流』という応援歌が制作されました。

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