嘱託銀

嘱託銀について

嘱託銀（しょくたくぎん、そくたくぎん）とは、江戸幕府が設けた密告を奨励するための褒賞金制度です。この制度は特に、キリシタン取締のために発展し、訴人報償制として人々に犯罪を告発することを促しました。嘱託銀は、密告によって犯罪者を摘発した市民に対する金銭的報酬の仕組みを整えたもので、江戸時代を通じて様々な改訂がなされました。

制度の起源と歴史

嘱託銀の起源は1618年頃にさかのぼります。当時、長崎奉行をつとめていた長谷川権六は、キリシタンの取り締まりを強化するために市中に30枚の銀の延棒を掲げ、密告を奨励しました。この施策は、彼の独自の取り組みであり、その後の1626年には報奨金が100枚に増額されました。

このような施策は、島原の乱が起こった1633年以降、商業としての鎖国令が制定される際に正式に採用され、全国に広がりました。特に宣教師に対する報奨金は定められており、当初は100枚でしたが、わずか2年後には300枚、1674年には500枚にまで増加しました。なお、宣教師と一般信者では報償金額に違いがあり、そのため、実際にはかなりの額の金が流通することとなりました。

制度の全国的展開

嘱託銀は江戸幕府だけではなく、地方の藩でも独自に褒賞制度を設けることがあり、結果的に日本各地でキリシタン取締のための密告が奨励されました。これにより、密告を行うことで得られる報酬の総額は膨大なものとなり、地域によっては異なる金額が設定されることもありました。

明治以降の影響

明治維新が訪れると、この制度は新政府によって引き継がれ続けましたが、欧米諸国からの強い抗議により、最終的には廃止されることとなります。嘱託銀制度の影響は、当時の社会において密告を奨励する文化を形成しました。

関連項目

この制度に関連して、イスカリオテのユダの逸話も挙げられます。『マタイによる福音書』で、ユダはイエス・キリストを裏切る際に銀貨30枚を受け取ったとされます。このように、金銭がもたらす忠誠心の裏切りや、告発のインセンティブがもたらした結果には、時代を超えた共通項があると言えるでしょう。

参考文献

• - 重松一義「嘱託銀」『国史大辞典 7』、吉川弘文館、1986年ISBN 978-4-642-00507-4
• - 清水紘一「嘱託銀」『日本歴史大事典 2』、小学館、2000年ISBN 978-4-095-23002-3
• - 『日本史総合辞典』東京書籍 林陸朗・村上直・高橋正彦・鳥海靖、1991年11月10日初版発行

もう一度検索