四三式繋留気球

四三式繋留気球の概要

四三式繋留気球は、日本の大日本帝国陸軍が運用した偵察用の気球です。この気球は、前身にあたる日本式気球の技術を基にして開発され、陸軍の偵察活動に重要な役割を果たしました。日本式気球は、1900年に山田猪三郎によって試作され、その後の昇騰試験によって特許を取得しました。この気球は、1903年から軍に採用され、日露戦争を経て更なる改良が加えられました。

開発の経緯

1900年4月、山田猪三郎が陸軍工兵会議の協力を得て紙製の気球の試作を行い、5月には結果を受けて特許を取得しました。その後、日本式気球は戦時中においても運用され、特に日露戦争において臨時気球隊が編成され、その部隊に新しい設計の2人乗り偵察用気球が配備されました。これにより、気球部隊は旅順の偵察にも従事しました。

1905年には、ドイツから輸入されたパルゼバール式繋留気球が日本式と併用されるようになりましたが、風の抵抗が大きいパルゼバール式は1909年に廃止されました。同年、陸軍技術審査部から山田製作所に対して新しい繋留気球の試作が命じられ、1910年にその試作機が完成し、1911年に「四三式繋留気球」として正式に採用されました。

設計と性能

四三式繋留気球の設計は、日本式気球の利点を最大限に活かしつつ、最新の技術を取り入れていました。気嚢形状は長い卵型で、動揺が少なくて強風に対しても耐えることができました。風力を活用して上昇する機能に加え、凧と気球を組み合わせた「凧式繋留気球」としても定義されていました。気嚢の尾部には垂直安定板を装備し、水素ガスが充填されていました。

この四三式では、以前の設計よりも性能を向上させており、運用に必要な気球車両も軽量化されています。また、使用材料には絹が使われ、吊籠には電話器などの通信装置が備わっていました。しかしながら、強風に対する安定性は改善されていたものの、風速15 m/sを超えると昇騰できなくなるという制約がありました。これは、同時期のフランス製の繋留気球と比較して見劣りする点とされていました。

諸元

四三式繋留気球の具体的な仕様は以下のとおりです：

• - 全長：23.75 m または 25.8 m
• - 全幅：7.2 m
• - 全高：9.3 m
• - 気嚢容積：800.0 m³
• - 重量：240 kg
• - 昇騰高度：600 m
• - 乗員：2名

戦歴と運用

四三式繋留気球は、1912年から気球隊に配備され始めました。第一次世界大戦中の1914年には、青島へ1基を装備した気球中隊が派遣され、そこで偵察活動や弾着観測を行いました。このように、四三式繋留気球は日本陸軍の航空技術の一環として、歴史的に重要な役割を果たしてきます。

参考文献

• - 佐山二郎著『日本の軍用気球 知られざる異色の航空技術史』潮書房光人新社、2020年。
• - 秋本実著『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年。

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