四人の使徒

『四人の使徒』

アルブレヒト・デューラーが1526年に完成させた油彩画『四人の使徒』は、ルネサンス期の重要な作品です。この絵画は、福音記者ヨハネとペテロ（左側パネル）、そしてマルコとパウロ（右側パネル）という、キリスト教の重要な人物たちを等身大より大きく描いています。

作品の構成

この作品は二つのパネルで構成されています。左側のパネルには、福音記者ヨハネが自身の福音書の冒頭を読み、傍らにはペテロが描かれています。右側のパネルには、マルコとパウロが描かれ、それぞれが聖書を持っています。各パネルの下部には、聖書からの引用が刻まれており、彼らの信仰と教えを示唆しています。

使徒たちはそれぞれの持ち物によって識別できます。ヨハネは開いた本、ペテロは鍵、マルコは巻物、そしてパウロは剣と閉じた本を携えています。また、彼らはそれぞれ四大気質（多血質、粘液質、胆汁質、憂鬱質）にも関連付けられています。

構図と表現

この作品は、デューラーがヴェネツィア滞在中に見たジョヴァンニ・ベッリーニの作品から影響を受けています。左右のパネルを比較すると、右側のパウロとマルコは画面外を厳しく見つめているのに対し、左側のペテロとヨハネは書物に目を落とし、深い思索にふけっています。色彩も対照的で、左側は鮮やかで、右側は白と黒を基調にまとめられています。

マルコは使徒ではありませんが、パウロの伝道に同行した人物として描かれています。この配置は、彼が神の言葉を伝える重要な人物であることを示唆しています。それぞれの人物の年齢、性格も異なり、多様な視点から一つの真理を語りかけてくるという、デューラーの意図が感じられます。

歴史的背景

『四人の使徒』は、宗教改革の時代に制作されました。この時期、プロテスタントの中には、偶像が神の言葉と矛盾すると考える人もいました。そのため、デューラーのようなプロテスタントの芸術家は、自ら作品を依頼する必要がありました。

この作品は、1525年にニュルンベルク市参事会がルター派新教への参加を決定した時期に制作されました。この決定は、ローマ・カトリック教会からの決別を示すと同時に、急進的な宗派を排除するものでした。画面下の銘文は、偽預言者の出現を警告していますが、これはローマ教会よりもむしろ急進派を指していると解釈できます。

特に、最も困難な闘いを経験したパウロが、鑑賞者の方を向いているのは、当時の厳しい社会状況を反映していると考えられます。また、ヨハネがペテロよりも重要な位置に描かれているのは、ペテロがローマ教会の祖であることへの配慮と、当時の市長への称賛であるとも解釈されています。

この作品は、デューラーが市参事会を支持し、神の言葉を伝えるものとして描かれたものと考えられています。デューラー自身が急進派を支持する弟子を出した経験も、この作品に影響を与えているでしょう。

まとめ

『四人の使徒』は、デューラーの芸術的才能と、宗教改革という激動の時代における信仰、社会への支持を示した作品です。この絵画は、歴史的、宗教的、芸術的な観点から多くのことを物語り、今日でも多くの人々を魅了しています。

関連作品

『ヤコプ・ムッフェルの肖像』(ベルリン絵画館所蔵) 本作と同年 (1526年) 制作のデューラーの絵画

外部リンク

アルテ・ピナコテークの本作 (聖ヨハネと聖ペテロ) のサイト (英語) [3]
* アルテ・ピナコテークの本作 (聖マルコと聖パウロ) のサイト (英語) [4]

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