四清運動

四清運動（社会主義教育運動）

四清運動、あるいは社会主義教育運動は、中華人民共和国において1963年に毛沢東の主導で開始された政治運動です。この運動は、建国以来の社会主義建設の過程で生じたとされる、中国共産党内部の腐敗や官僚主義、そして社会全体に広がる資本主義的な傾向を根絶することを目的としていました。毛沢東自身は、「統治そのものが社会主義教育の過程である」との認識を示し、党の機構内に潜む反動的な勢力を排除しようと試みました。

当初、この運動の焦点は、地方における人民公社の運営、特にその経済面に置かれていました。具体的には、「帳簿」「倉庫」「財産」「労働点数」の4項目を清浄化（「四清」）することを通じて、幹部の汚職や不正行為、非効率な管理体制を是正し、生産活動の組織化を促進することを目指していました。当時の国家主席であり、毛沢東の後継者候補とも目されていた劉少奇は、この運動を主として末端幹部の不正摘発と経済再建のための実務的な改革として位置づけ、その推進を担いました。

しかし、運動は毛沢東の意図により、当初の目的を超えて急激に拡大・変質していきました。毛沢東は、運動を単なる汚職対策にとどめるのではなく、党内部に存在する「走資派」（資本主義の道を歩もうとする者たち）を攻撃する大規模な階級闘争へとエスカレートさせました。目標は「政治」「経済」「組織」「イデオロギー」の四分野における全面的な「浄化」に拡張され、大衆を動員した党内権力闘争の様相を呈するようになりました。

この運動は1966年まで断続的に続けられました。運動の一環として、都市部の知識人や若者が農村に送られ、農民とともに労働を通じて思想の「再教育」を受ける「下放」も行われました。学校に通う学生も、工場や農場での作業に従事させられることがありました。

四清運動の過程で、党指導部内での対立が顕在化しました。特に、運動の性格づけや進め方を巡って、劉少奇と毛沢東の関係は決定的に悪化しました。毛沢東は劉少奇を「走資派の総元締め」とみなし、運動を通じて劉少奇の権力基盤を切り崩しにかかりました。

運動の結果として、多くの人々が迫害を受け、犠牲となりました。中国国内の研究者による指摘では、この運動によって少なくとも77,560人が死亡し、5,327,350人以上が迫害されたとされています。運動によって追い詰められた劉少奇は、後の文化大革命において「裏切り者」「走資派」として徹底的に批判され、非業の死を遂げることになります。

四清運動は、しばしば1966年に開始されることになる文化大革命の「前奏曲」あるいは「予行演習」と見なされています。この運動を通じて、毛沢東は劉少奇をはじめとする党内の穏健派を攻撃し、大衆動員による政治運動の有効性を再確認しました。アメリカの研究者ドナルド・クラインは、アメリカ大百科事典（Grolier Online）において、四清運動を「ほぼ完全な失敗」と評価しています。毛沢東は、この運動が期待したほどの成果を上げられなかったことに不満を抱き、より大規模で破壊的な政治運動である文化大革命へと舞台を移していくことになります。文化大革命初期の1966年8月19日には、北京で「四旧」（旧思想、旧文化、旧風俗、旧習慣）の破壊を叫ぶ運動が始まり、全国に波及していきました。

四清運動は、社会主義体制下における権力闘争と、イデオロギー的な浄化を目的とした政治運動が、いかに大規模な混乱と悲劇をもたらす可能性があるかを示す歴史的事例と言えるでしょう。

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