回想 (レニ・リーフェンシュタール)

自伝『回想』

『回想』はドイツの映画監督レニ・リーフェンシュタールが1987年に発表した自伝です。本書は彼女の人生や映画制作に関する多くのエピソードを描写しています。この自伝は、彼女の90歳の誕生日に発表されたこともあり、再評価されるきっかけともなりました。また、アメリカでは1993年に英語翻訳版が発表され、同年に公開されたドキュメンタリー映画『レニ』と共に注目を集めました。

本書の英語版は、イギリスでは『The Sieve of Time: The Memoirs of Leni Riefenstahl』、アメリカでは『Leni Riefenstahl: A Memoir』というタイトルで流通しました。さらに、日本語版は椛島則子の翻訳によって文藝春秋から1991年に上下巻として出版され、1995年には文春文庫としても発刊されました。

概要

リーフェンシュタールは、ナチス政権を背景にした映画『意志の勝利』や『オリンピア』などの制作を通じて、映像芸術における革新をもたらしました。本書では彼女の映画監督としてのキャリアが克明に描かれ、また戦後に直面した社会的なスティグマや、映画制作に対するさまざまな影響についても言及されています。このような過去の影は、彼女の人生にどのように影響を与えたのかを探る内容となっています。

また、リーフェンシュタールは優れた写真家としての活動も振り返ります。特に、彼女は著書『ヌバ (The Last of the Nuba)』で興味深い報告を行い、スーダンのヌバ族に関する取材や撮影活動の様子を描写しています。この活動を通じて、彼女は文化の違いを記録することの重要性を実感し、また新たな視点を提供しています。

加えて、著書『Coral Gardens』に記された、海中での撮影や探検に関する回想も印象的です。彼女の写真には独自の視点が宿り、自然の美しさを捉えた作品が読者を魅了します。

評価

本書は多くの批評家に好意的に受け入れられました。特に『ニューヨーク・タイムズ』が選ぶ1993年の特筆すべき書籍リストに登載されたことは、この作品の評価を高める要因となりました。『The New York Times Book Review』での評者ジョン・サイモンは「本書には興味を引かないページは1ページもない」と表現し、リーフェンシュタールの記述の鮮やかさを称賛しました。

ただし、彼は一部の内容には疑問を呈しつつも、全体として「本書は真実であろう。あまりにも奇妙すぎてフィクションとして扱うことはできない」と結論付けました。リーフェンシュタールの人生を知るためには、この自伝を通じた彼女自らの言葉が重要な手がかりとなるでしょう。彼女の目を通して、歴史の一端を垣間見ることができる貴重な資料として、多くの読者に影響を与え続けています。

もう一度検索