回教圏研究所

回教圏研究所の概要

回教圏研究所は、1938年3月に日本で設立されたイスラーム圏に特化した研究機関です。最初の所長であった大久保幸次の下で創設され、当時の名称は「回教圏攷究所」とされました。設立後間もなく、善隣協会という団体が経営を引き受け、1940年には現在の名称に変更されました。

研究所は1945年5月に空襲に見舞われ、建物は全焼しましたが、これまでの研究活動は続けられ、特に第二次世界大戦の時期には、日本人によるイスラーム地域の研究の中心的存在となっていました。井筒俊彦や竹内好など著名な研究者たちも在籍し、機関誌『回教圏』を定期的に発刊していました。

沿革

• - 1938年3月: 大久保幸次が東京で「回教圏攷究所」を設立。
• - 1938年5月: 善隣協会の経営下に移る。
• - 1938年7月: 機関誌『回教圏』が発刊され、1944年12月号まで66号が発行された。
• - 1940年5月: 「回教圏研究所」と名称変更し、原宿に移転。
• - 1945年5月: 空襲によって研究所は全焼し、活動が停止される。

所長・大久保幸次の人物像

大久保幸次（1887年 - 1947年）は、東京の牛込で生まれました。東京外国語学校を卒業後、東京帝国大学で東洋史を学ぶなかで、外務省や日土協会に依頼されトルコで活動しました。トルコでの経験をもとに、彼の資金援助を受けて回教圏攷究所を設立し、所長として実務を行っていました。

大久保は、善隣協会の方針と研究所の学術的目標の間でしばしば対立することがありました。彼は「直接日本人によるイスラーム研究」を重視し、占領地での研究を求められる中でも、学術の幅を守ろうとしていました。

研究員たち

研究員たちの中で多くは戦争により命を落としましたが、戦後もイスラーム研究を続けた数名の研究者がいます。野原四郎や蒲生礼一はそれぞれの分野で重要な貢献を果たし、別の専門分野に進んだ者も少なくありませんでした。以下に著名な研究者をご紹介します。

• - 野原四郎: 駒澤大学の講師として活躍し、戦後は中国現代史を研究。
• - 蒲生礼一: 東京外国語学校の教授で、後にイランやイスラーム研究を進展。
• - 井筒俊彦: イスラーム哲学の専門家として名を馳せました。
• - 竹内好: 戦後、中国文学研究の道へ。

機関誌『回教圏』について

回教圏研究所は、1938年に機関誌『回教圏』を創刊し、1944年まで通巻69号を発行しました。この雑誌は、イスラーム圏に関する重要なアカデミックな出版物となり、中国や南洋におけるイスラーム的なテーマを扱った多くの論文や論説が掲載されました。これは日本におけるイスラーム研究の草分け的存在とも言えます。

最終的に回教圏研究所は、幾多の歴史的背景をもとに、研究者たちの知識の交流やイスラーム圏に対する理解を深めてきた機関として重要な役割を果たしました。

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