因果のループ

因果のループとは

因果のループとは、タイムトラベルなどによって、ある出来事の結果が、その出来事の原因となるような、因果関係が循環している状態を指します。これは、原因と結果が互いに影響し合い、始まりも終わりもない、閉じた円環のような関係を作り出す現象です。

因果のループの例

例えば、過去の自分にタイムマシンの設計図を送るケースを考えてみましょう。過去の自分は、送られてきた設計図を元にタイムマシンを作り、そのタイムマシンを使って、さらに過去の自分に設計図を送ります。この場合、「一体誰が最初にタイムマシンの設計図を考え出したのか？」という疑問が生じます。因果のループの中では、原因の起源がどこにも存在しないというパラドックスが生じるのです。

また、ポーランドの物理学者デイヴィッド・ドイッチュは、負の遅延（逆方向の時間移動）を伴う量子計算が多項式時間でNP問題を解決できることを示しました。

因果のループの種類

ブートストラップパラドックス

情報や物体を含む因果ループは、ブートストラップパラドックスと呼ばれます。これは、「ブートストラップ（革靴を履きやすくするための取っ手）で自分を持ち上げる」という英語の言い回しに由来し、ロバート・A・ハインラインのタイムトラベル小説『時の門』でも取り上げられています。

宿命パラドックス

宿命パラドックスとは、タイムトラベラーが過去に行った行動が、最終的に元の未来の自分が過去に行くことになるきっかけを引き起こす、というように、未来の出来事が過去に影響を与え、同じ出来事が繰り返される現象です。

自己達成的予言

自己達成的な予言も、因果のループの一種と言えます。予言が「本当に実現する」ことが知られている場合にのみ、未来の出来事が過去に影響を及ぼします。古典演劇『オイディプス王』では、オイディプスが予言を阻止しようとする過程で、父親を殺し、母親と結婚し、子を作るという予言を、知らず知らずのうちに実現してしまいます。

ノヴィコフの首尾一貫の原則

物理学者のイゴール・ノヴィコフは、時間的閉曲線（CTC）を含む宇宙において、一貫性のある移動のみが許可されるという「首尾一貫の原則」を提唱しました。これは、過去に送られた物体の種類に関わらず、タイムトラベルが解決できないパラドックスに繋がる必要はない、という考え方です。

物理学における因果のループ

一般相対性理論の厳密解は、タイムトラベルを可能にするいくつかの手法を示唆しています。しかし、因果のループは、物理法則との矛盾や、自由意志の問題など、様々な問題を提起します。

ポルチンスキーのビリヤードボール

物理学者のジョセフ・ポルチンスキーは、ビリヤードボールが時間内に返送されるという逆説的な状況を考察しました。この状況では、ボールは過去に繋がったワームホールに発射され、その進路に沿って進むと、過去のボール自身に当たり、進路を変えてしまいます。この問題を解決するために、カリフォルニア工科大学の学生たちは、ボールが異なる角度で過去に出現し、過去のボールに衝突するという解決策を提案しました。

関連項目

因果性
時間順序保護仮説
ミュンヒハウゼンのトリレンマ
ニューコム問題
タイムトラベル
親殺しのパラドックス
* ループもの

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