国定教科書

国定教科書制度の概要とその歴史

国定教科書とは、国家が権限を持って編集・発行・配布する教科書の制度を指します。この制度は、特に歴史認識や教育方針に影響を与えてきたため、各国での採用状況は異なります。

採用国と変遷

現時点で国定教科書を採用している国には、タイ、マレーシア、イラン、ミャンマー、ロシア、トルコ、キューバ、リビア、北朝鮮などがあります。日本では、1903年から1945年まで国定教科書が使用されましたが、戦後は検定制へと移行しました。韓国では、政権交代に伴い国定教科書が復活したり廃止されたりしています。例えば、1972年には右派の朴正煕政権が国定教科書制度を導入し、2002年には左派の金大中政権によって検定教科書制度が復活しました。2015年には再び国定教科書の導入が発表されましたが、2017年には新しい政権により再び廃止されることとなりました。

日本における国定教科書の歴史

日本では、1872年に義務教育が始まった際に、検定済みの教科書が使用され、その後教科書疑獄事件が発覚すると国定教科書制度に移行しました。この制度は、国家が教育方針を強く反映させるために設けられたもので、検定を通じて教科書の内容が管理されていました。1945年以降は、憲法に基づき文部科学省が検定した教科書が使用されるようになりました。

戦後の教科書検定制度の影響

戦後、日本では文部省（現在の文部科学省）が検定した教科書に基づく教育制度が続きます。その中でも、歴史教科書における「自虐史観」に対する批判が高まり、2013年には教育再生実行本部が「教科書法」の制定を検討しました。特に1982年には、中国華北地域への進出に関する記述を巡って問題が起こり、その結果、日本政府は近隣諸国条項を設け、教科書編集において中国や韓国の意向を考慮することが定められました。

韓国における国定教科書の流れ

韓国では、初等[[教育]]から高等教育まで国定教科書が使用されていたが、盧武鉉政権のもとで2007年に国定教科書制度が廃止されました。しかし、国史に関しては国定教科書が存在し、その内容には左翼的な視点が強いと批判され、より多様な視点を反映した新たな教科書の必要性が叫ばれました。2015年、朴槿恵政権は再び国定化の方針を発表し、歴史の記述内容を具体的に増加させることを試みましたが、文在寅政権が誕生するとその方針は再度覆され、国定教科書は実際にはあまり使用されなくなりました。

結論

国定教科書制度は、単なる教育の手段を超え、国家の政治的意向が色濃く反映されるものです。特に日本や韓国のように、政権によってその方針が大きく変わる国では、教科書の内容が国民の歴史観に深く影響を与えています。国定教科書制度の動向は、これからの教育政策や国際関係においても重要な要素となるでしょう。

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