国家の品格

『国家の品格』は、2005年11月20日に新潮新書から出版された藤原正彦氏の著書です。本書は、もともと藤原氏が講演で語った内容を基にしており、そのため、文章は親しみやすい口語調で書かれています。ところどころにユーモラスな表現が用いられているのも特徴です。例えば、「妻を筆頭に殴りたい女性はたくさんいます」といった過激な表現や、「（什の掟は）最後の七つ目以外は納得できます」のような、読者をクスリとさせるような表現が見られます。

本書の主な主張は、西洋、特にアメリカの「論理万能主義」に対する批判です。藤原氏は、何でも論理で割り切ろうとする考え方に対し、「だめなものはだめ」と感情や直感といったものを重視する立場を明確にしています。また、グローバリズムを真っ向から否定し、自国の伝統や文化、そして美意識を重んじることの重要性を訴えています。

本書のタイトルにもなっている「国家の品格」を取り戻すことが、この本の主題です。藤原氏は、日本が世界で唯一の「情緒と形の文明」を持つ国であると述べ、その独自性を大切にすることを強調しています。また、本文中には、前著のタイトルにも用いられた「祖国とは国語」という言葉が繰り返し登場し、国語教育の重要性も説いています。

『国家の品格』は、出版後、急速に多くの読者に支持され、2006年5月までに265万部を超えるミリオンセラーとなりました。トーハン調べによる2006年の年間ベストセラーランキングでは、総合1位を獲得しています。

本書のタイトルである「品格」は、2006年の新語・流行語大賞を受賞しました。この受賞をきっかけに、「～の品格」と銘打った書籍が数多く出版され、「品格ブーム」と呼ばれる現象が起こりました。例えば、坂東眞理子氏の著書『女性の品格』は300万部以上を売り上げ、ドラマ『ハケンの品格』は平均視聴率20.1%を記録するなど、社会現象を巻き起こしました。他にも、『会社の品格』『日本人の品格』『自分の品格』『親の品格』『男の品格』『遊びの品格』といった関連書籍が多数出版されました。

著者である藤原氏は、本書の出版後、自身の行動が制限されるようになったと述べています。もし、何か不祥事を起こせば、週刊誌などが「『国家の品格』の著者の品格」と書き立てるだろうと懸念し、行動に慎重にならざるを得なくなったと語っています。

本書は、翻訳版や関連書籍、講演録なども出版されています。翻訳版としては、ジャイルズ・マリー訳の『国家の品格 対訳ニッポン』が、2007年に出版されています。また、藤原氏の講演をまとめたものとして、日本ペンクラブ編『日本ペンクラブ名スピーチ集』に「天才を生む土壌と国家の品格」が収録されています。

一方で、本書に対して批判的な書籍も出版されています。木村和彦氏の『「国家の品格」を撃つ』、島井宏行氏の『『国家の品格』批判』、吉孝也氏と前川征弘氏の共著『「国家の品格」への素朴な疑問』などがその例です。

関連キーワードとして、本書の内容に関連する愛国心、岡潔、国語、国民国家、地域主義、パトリオティズムなどが挙げられます。また、新潮社の公式サイトでは、本書の特設ページが設けられており、編集者の言葉や立ち読み、山田太一氏との特別対談などが公開されています。

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