国家人権委員会

大韓民国に設置された国家機関で、正式名称は「国家人権委員会」（National Human Rights Commission of the Republic of Korea）です。その設立目的は、全ての個人が生まれながらにして持つ侵すことのできない基本的人権を保護し、その水準を高めることにあります。これを通じて、人間としての尊厳と価値を実現し、民主的な基本秩序の確立に貢献することを目指しています。委員会は、立法府、司法府、行政府のいずれにも属さない独立した地位を保ち、独自の権限に基づき職務を遂行します。

設立の背景と経緯

国家人権委員会の設立および組織設置の過程は、社会の多様な利害関係が絡み合い、平坦なものではありませんでした。国際的な動きとして、1993年6月10日にウィーンで開催された国連世界人権大会において、大韓民国政府に対し国家人権機構の設置が要請されたことが一つの契機となりました。国内では、1997年11月に当時の金大中大統領候補が、人権法の制定と国民人権委員会の設立を選挙公約として掲げました。金大中政権が発足した1998年には、国家人権委員会設置を骨子とした計画が発表され、政府からは法務部が所管する形での設置法案が提出されました。

しかし、アムネスティをはじめとする市民団体は、機構の独立性を確保するため、法務部のような特定省庁の所管とすることに強く反対し続けました。こうした議論を経て、独立した委員会としての地位を明確にした「国家人権委員会法」が2001年 5月24日に制定されました。法の制定後も、事務処の定員や予算を巡って行政自治部との間に軋轢が生じ、その調整には時間を要しました。最終的に、国家人権委員会事務処は2002年 4月1日に発足し、本格的な活動を開始しました。

主な役割と業務

国家人権委員会は、「国家人権委員会法」第19条に基づき、広範な人権擁護・促進活動を行います。主な業務は以下の通りです。

人権に関連する法令、制度、政策、および慣行について調査・研究を行い、その改善に向けた勧告や意見を表明する。
発生した人権侵害行為や差別行為について調査を行い、被害者の救済措置を講じる。
国内の人権状況に関する実態調査を実施する。
人権意識の向上を目指した教育活動や広報活動を行う。
人権侵害の一般的な類型、判断基準、およびその予防策などに関する指針を示し、勧告を行う。
国際的な人権規約への加入や、既に参加している条約の国内での履行状況について研究し、勧告や意見を表明する。
人権の擁護と伸長のために活動する国内外の団体や個人との連携を図る。
人権関連の国際機関や外国の人権機構との交流・協力を推進する。
その他、人権の保障と向上に必要と認められる事項について業務を遂行する。

委員会の会議における議決は、特別の定めがない限り、在籍する委員の過半数の賛成をもって成立します。

組織体制

委員会は合計11人の委員で構成されます。委員はそれぞれ異なる主体から選出され、国会から4人（うち常任委員2人）、大統領から4人、大法院長から3人が指名されます。委員の任期は3年です。委員のうち1人が委員長（閣僚級）、3人が常任委員（次官級）を務めます。また、委員全体のうち4人以上は女性でなければならないと定められています。

委員会の実務を担う事務処は、事務総長のもとに複数の組織が置かれています。主な組織には、運営支援課、企画調整官（企画財政担当官、行政法務担当官を管轄）、人権相談センター、政策教育局（人権政策課、人権教育課、広報協力課）、調査局（調査総括課、侵害調査課、差別調査課、障害差別調査第1課・第2課）などがあります。また、地方における活動拠点として、釜山、光州、大邱に人権事務所が設置されています。

沿革

2001年 5月24日：国家人権委員会の設置を定める「国家人権委員会法」が制定される。
2001年 10月9日：委員会の初代委員長および委員が任命される。
2002年 4月1日：国家人権委員会事務処が設置され、業務を開始する。
2006年 1月9日：人権に関する法制度や慣行の改善を目標とする、政府の「国家人権政策基本計画」（National Action Plans／NAP）に関する勧告案が策定される。

歴代委員長

初代：金昌国（김창국）2（2001年 11月25日 - 2004年 12月23日）
第2代：崔永道（최영도）（2004年 12月24日 - 2005年 3月23日）
第3代：趙永晃（조영황）（2005年 4月4日 - 2006年 10月2日）
* 第4代：安京煥（안경환）（2006年 10月30日 - 在任中）

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