国家元帥

国家元帥（Reichsmarschall）は、第二次世界大戦中のドイツ国防軍において、最高位に位置づけられた階級です。この称号は、帝国元帥や大ドイツ総元帥とも訳され、事実上の大元帥に相当すると考えられています。

歴史

国家元帥（Reichserzmarschall）という称号は、その起源を12世紀以前の神聖ローマ帝国時代に遡ることができます。しかし、その後は長らく任官されることがなく、ドイツ帝国時代や第一次世界大戦中には、ドイツ帝国陸軍において国家元帥に任命された人物はいませんでした。

この称号が再び脚光を浴びるのは、ナチス・ドイツ時代のことです。この時代、「大ドイツ国国家元帥（Reichsmarschall des Großdeutschen Reiches）」として復活し、1940年にドイツ空軍の最高指揮官であったヘルマン・ゲーリング元帥が唯一この階級に昇進しました。ゲーリングは、同年7月19日の元帥任命式において、他の国防軍の将軍たちよりも上位であることを示し、事実上の大元帥としての地位を確立しました。しかし、これは他国における名誉称号のようなものではなく、アメリカ軍における個別の階級制度に近いものでした。

国家元帥の地位は、アドルフ・ヒトラーの総統の地位に次ぐものであり、ゲーリングがヒトラーの後継者であることを示唆する意味合いもありました。しかし、1945年4月末、ゲーリングがヒトラーに指揮権の委譲を求めた電報を送った直後、ヒトラーはゲーリングから全ての官位を剥奪し、海軍総司令官のカール・デーニッツ海軍元帥を新たな後継者に指名しました。この任命は、ヒトラーが自殺した日である1945年4月30日より前に行われましたが、マルティン・ボルマンとヨーゼフ・ゲッベルスによって、その公示は1945年5月1日まで延期されました。

階級章・制服・旗

ゲーリングは、国家元帥に昇進するまでは空軍元帥の制服と階級章を着用していました。しかし、昇進後は専用の制服と階級章を着用するようになり、陸海空軍元帥よりも上位の存在であることが明確に示されました。

階級章は、空軍将官のものと同様に白を基調としており、右胸や軍帽に着用する鷲章も空軍型のものが採用されました。また、元帥杖も白のものを使用していた点が特徴的です。

まとめ

国家元帥は、ナチス・ドイツにおいて最高位の軍事階級であり、ヘルマン・ゲーリングという唯一の人物によってその地位が占められました。この階級は、単なる軍事的な階級を超え、政治的な意味合いも持つものであり、当時の複雑な権力構造を象徴するものでした。

参考文献

* Haskew, Michael (2011). The Wehrmacht. Amber Books. ISBN 978-1-907446-95-5

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