国家地方警察北海道本部

国家地方警察北海道本部：黎明期の警察制度

国家地方警察北海道本部（以下、道本部）は、旧警察法時代に設置された北海道における都道府県国家地方警察であり、自治体警察が設置されていない地域を管轄区域としていました。国家地方警察本部の地方部局である札幌警察管区本部が行政的調整を担っていました。

発足と変遷

発足当初、道本部は他都府県とは異なり、札幌・函館・旭川・釧路・北見の5つの方面本部を傘下に置いていました。しかし、1949年1月に道本部が廃止されると、これらの方面本部は札幌警察管区本部の行政管理下に置かれることになります。各方面には公安委員会が設置され、方面本部は国家地方警察都府県本部と同格の存在となりました。

その後、財政的な理由から自治体警察を返上する小規模自治体が増加し、その地域は国家地方警察が管轄することになりました。また、当初の地方自治の原則では対応しきれない大規模な不法暴力事案が多発したことから、警察制度の見直しが進められ、最終的には現行の警察法へと移行しました。

沿革

第二次世界大戦後

1945年8月の第二次世界大戦終戦後、同年9月に発表された「降伏後に於ける米国の初期の対日政策」において、日本の警察制度の根本的改革が決定しました。内務省は民主警察制度の導入に向けた諸施策を講じる一方で、警保局に企画課を設置し、英米などの諸外国の制度研究を進めました。

GHQの関与

1946年3月、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）は、元ニューヨーク警視総監に都市警察、ミシガン州警察部長に地方警察の調査を依頼しました。同年5月には、両調査団が札幌警察署と中頓別警察署で組織および指揮系統を調査し、日本の警察制度の根本的改革に関する勧告案をGHQに提出しました。

同年10月、内務省は警察制度審議会を設置し、11月には警察制度の改善に関する諮問を行いました。12月には、同審議会が従来の中央集権的制度を廃止し、警察事務を地方へ移譲する地方分権化された民主的警察制度の確立を骨子とする答申を行いました。

新憲法と警察制度

1947年5月3日、日本国憲法および地方自治法が施行されましたが、警察制度は従前どおりとされ、地方自治法の附則で必要な暫定措置が講じられました。北海道庁警察部は「北海道警察部」に改称されました。

同年7月、政府は関係閣僚から成る特別委員会を設置し、警察制度審議会の答申を検討し、改革試案を作成しました。同年9月には、GHQのマッカーサー元帥に非公式に「警察制度改組計画」を提出しましたが、元帥は政府方針に不満を示し、新警察構想を示唆するとともに修正を要請しました。

警察法の公布

1947年12月17日、「警察法（昭和22年12月17日法律第196号）」が公布されました。この法律では、警察の民主化と地方分権の強化が謳われ、警察の責務を国民の生命・身体・財産の保護、犯罪捜査、被疑者逮捕、公安維持に限定しました。警察管理の責任者として公安委員会が設置され、同委員会が警察長を任命することとされました。

市および人口5,000人以上の市街的町村には「自治体警察」が置かれ、それ以外の地域は「国家地方警察」が管轄することとなりました。

国家地方警察北海道本部の発足

1948年1月1日、北海道警察部に「国家地方警察北海道本部」が併置されました。同年3月には、警察法の施行に伴い、国家地方警察および自治体警察が発足し、国家地方警察札幌警察管区本部と道本部が合同で業務を開始しました。北海道警察部から道本部へ事務が引き継がれ、新たな警察体制へと移行しました。

組織再編

1948年6月1日、道本部は従来の9方面本部から5方面本部（函館・札幌・旭川・釧路・北見）に集約・強化されました。1949年1月1日には、5方面本部は都府県本部と同様の権限を持つ組織に改編され、道本部は発展的に解消し、その事務は警察管区本部に引き継がれました。

自治体警察の廃止と国家地方警察の拡大

1951年6月、警察法の一部が改正され、人口5千以上の町村では住民投票によって警察を維持しないことが可能となりました。これにより、北海道でも自治体警察を返上する町が相次ぎ、その区域は国家地方警察の管轄に編入されました。

現行警察法への移行

1954年7月1日、改正警察法（法律第162号）が施行され、現在の警察制度へと移行しました。

敗戦後の混乱期から、GHQの指導による警察制度改革、そして現行制度への移行という激動の時代において、国家地方警察北海道本部は重要な役割を果たしました。その組織変遷と活動は、日本の警察史における貴重な記録と言えるでしょう。

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