国庫制度

国庫制度について

国庫制度（こっこせいど）は、国家による現金や有価証券などの出納や経理を管理する制度です。国庫に属する現金は「国庫金」と呼ばれ、国から必要な経費を支出することは「国費」と呼称されます。この制度は各国の歴史や経済、行政、財政制度に応じて異なる形態をとり、主に金庫制度と預金制度に分類されます。

国庫制度の形態

国庫制度には、狭義には現金出納としての国庫金が含まれますが、広くは有価証券や物品、国有地など国が所有する他の財産も含まれます。さらに、法令や契約に基づいて一般私人から預かっている現金（保管金、供託金）や、公庫から預けられた業務用現金も国庫金に該当します。

金庫制度と預金制度

1. 金庫制度: これは国庫金を他の資金とは分離して管理する方法です。金庫制度には、国が直接出納業務を行う固有金庫制と、中央銀行などに業務を委託する委託金庫制があります。これにより、国は自ら直接管理することなく、効率的に財政運営が可能となります。

2. 預金制度: こちらは国庫金を銀行に預けて管理する方式で、他の資金と共に経理されます。国は返還請求権のみを持つ形です。このシステムは、国家の資金運用や通貨政策の実施を容易にします。預金制度は、主に中央銀行への預託と市中銀行への預託の2つの形態があります。現代の多くの国家では、金融制度の整備を背景にこの預金制度を採用する傾向にあります。

日本における国庫制度

日本の国庫制度は、財務省が管轄しており、現在は預金制度が採用されています。国庫金の取り扱いは日本銀行に一本化される国庫統一主義のもとで行われており、この制度の運用は非常に効率的です。国庫金は原則として日本銀行に預けられ、原則として日本銀行を通じて支払いがなされます。このシステムでは、官庁会計事務データ通信システム（ADAMS）を介して金融機関への振込が行われます。

近年のデータによると、日本銀行は平成27年度に3.2億件、1212兆円の国庫金の支払を扱い、収入は1.3億件、1229兆円にのぼります。政府が日本銀行に預ける資金は「政府預金」と呼ばれ、主に当座預金として管理されています。

歴史的な変遷

日本の国庫制度の歴史は明治時代に遡ります。当初、新政府は政府内部に出納機関を設ける国有金庫制度を採用していましたが、1872年からは市中金融機関に業務を委託し、1882年には日本銀行が設立され、この銀行に国庫金の取り扱いを委任しました。1890年には会計法が施行され、金庫制度から日本銀行への委託金庫制度に移行しました。

1922年の新しい会計法では、日本銀行を金庫とすることを停止し、国庫金の出納業務を再び日本銀行に委託しました。これにより国庫金は預金制度に移行し、現行の会計法でもこの制度が引き継がれています。

国庫収支について

国庫金の入出金を示す国庫収支は、受払の相手方によって3つに分けられます。国庫内振替収支、国庫と日本銀行との収支、さらには国庫と民間との収支です。特に国庫と民間の関係は、経済全体に大きな影響を与えるため、重要な経済指標として位置づけられています。

このように、国庫制度は国家の財政運営において不可欠な役割を果たし、経済活動に深く関わっていることが理解できます。

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