国民擲弾兵

国民擲弾兵：第二次世界大戦末期のドイツ軍歩兵師団

国民擲弾兵（Volksgrenadier）は、第二次世界大戦末期にドイツ国防軍が設けた歩兵師団の一種です。同時期に存在した国民突撃隊（Volkssturm）とは異なる部隊です。

概要

1944年秋、ドイツ軍は東部戦線でのバグラチオン作戦での大損害と、西部戦線におけるノルマンディー上陸作戦での損失を補うため、新たな兵力編成を必要としていました。そこで編成されたのが国民擲弾兵師団であり、終戦までに78個師団が編成されました。

各師団の成り立ちは様々で、戦闘で壊滅または損害を受けた歩兵師団を再編したものもあれば、完全に新しい師団として編成されたものもありました。人員構成も多様で、少年兵や高齢者、健康上の理由で不適格とされた者、傷病兵、さらには空軍や海軍からの転属者など、必ずしも質の高い兵士ばかりではありませんでした。

「国民擲弾兵」という名称は、精鋭部隊の代名詞である擲弾兵の名を冠することで、国民の士気を高めることを目的としていました。また、「国民」（Volk）という言葉は国粋主義的な意味合いを持ち、ドイツの伝統的な兵科である擲弾兵と組み合わせることで、国民の団結を促す狙いがありました。

編制と戦歴

ドイツ軍は人的資源の枯渇が進む中で、全戦線が崩壊の危機に瀕していました。そのため、早急な戦力立て直しが求められ、各師団の兵力や戦闘力よりも、師団として編成が完了していることが優先されました。また、ドイツ軍は攻勢から防衛へと戦略を転換していたため、少数の精鋭部隊よりも、装備や経験が不足していても、編成上は完結した多数の部隊が必要とされていました。

通常の歩兵師団は3個歩兵連隊（各連隊3個大隊）で構成されますが、国民擲弾兵師団では3個歩兵連隊（各連隊2個大隊）で編成されました。また、師団司令部直属の機動予備として1個歩兵大隊が配置されましたが、自動車化は困難であったため、自転車での移動を余儀なくされました。

装備面では、重火器の供給不足から、突撃銃や短機関銃などの自動火器が重視され、近接戦闘能力の強化が図られました。支援兵器は迫撃砲程度が主体で、装甲兵器や重砲などの重装備はほとんど保有していませんでした。

国民擲弾兵師団は、バルジの戦いやジークフリート線、東部戦線における防衛戦など、ヨーロッパ戦線の最終局面で投入されました。多くの師団は基本的な戦闘訓練も不十分なまま実戦に参加しましたが、旧来の正規歩兵師団を母体とした部隊など、経験豊富な指揮官に恵まれた一部の部隊は、その編成上の弱点を克服し、戦略的に不利な状況下でも粘り強く戦い抜きました。

師団記章（インシグニア）

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関連項目

国民突撃隊
歩兵師団

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