国民栄誉賞

国民栄誉賞について

国民栄誉賞（こくみんえいよしょう）は、日本の内閣総理大臣が授与する特別な賞であり、1977年に設立されました。この制度は、特に社会に貢献し、国民に希望をもたらすような顕著な業績を持つ人々を表彰することを目的としています。初代の受賞者はプロ野球選手の王貞治であり、彼の本塁打世界記録達成を祝うために創設されました。

## 創設の背景

国民栄誉賞の設立に至った背景には、先行してあった「内閣総理大臣顕彰」がありました。この顕彰制度は、学術や文化、スポーツ等に貢献した人を限定的に表彰するもので、対象が6つのカテゴリーに制限されていました。そのため、プロスポーツ選手である王のような存在を顕彰する例が存在せず、福田赳夫内閣総理大臣が新たな方針を掲げることになりました。この新しい賞は、より包括的な基準を持ちながら、個人の業績をユニークに称賛することを目的としています。

## 表彰の取り決めと基準

国民栄誉賞の授与には、「表彰状及び盾」という正賞が贈られ、受賞者には「記念品または金一封」という副賞も与えられます。しかしながら、金一封の金額については公開されておらず、メディアは約100万円と予想しているものの、公式な基準は定まっていません。また、特定の条件は設けられていないものの、受賞者にはこれまでの多大な功績に加えて、歴史的に重要な業績が求められるという暗黙の期待が存在します。

表彰の選考プロセスは透明性を保つために、民間から有識者を招き、意見を集める仕組みが取られています。この際、関係者への打診が行われ、受賞の意志が確認された後に正式な手続きが始まります。このような仕組みを通じて、政府の独断ではなく、多様な意見を反映した表彰が進められています。

## 授与されてきた受賞者

これまでに、国民栄誉賞は27人の個人と1団体に授与されています。受賞者にはプロスポーツ選手が多く含まれ、初めて団体として受賞したのはサッカー日本女子代表であり、35名の選手とスタッフが該当しました。特に、安倍晋三元総理は、最も多くの受賞者を出した総理大臣として知られています。

受賞辞退の事例

いくつかの著名人が受賞を辞退する事例もあります。例えば、プロ野球選手の福本豊は、自身の記録に対する自信のなさから受賞を断りました。イチローも同様に、現役中の受賞をなじられましたが、その理念は、現役期間中の功績ではなく、キャリアの全体をもって評価してほしいとの意向によるものでした。

課題と議論

国民栄誉賞に対しては、評価基準が明確でないことや、受賞者決定の経緯に政権の思惑が含まれるとの疑念から、批判的な意見も浮上しています。特に、スポーツ選手に対し若年層から受賞が多い一方で、文化人や芸術家に対しては没後の授与が多いとされ、社会的認知の問題も指摘されています。

国民栄誉賞は、時に議論を招くものの、各界の優れた業績を称える重要な制度として、日本社会に根付いていきました。これからも、多様な価値観と実績を持つ人々が顕彰されることが期待されています。

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