国民歌謡

国民歌謡

「国民歌謡」は、日本のラジオ番組で、1936年から1941年にかけて放送されました。月曜から土曜までの午後0時35分から5分間、毎週新しく作られた曲が流れるスタイルで、今の音楽ランキングのような存在でした。この番組は、後に「われらのうた」と改題され、さらには「国民合唱」、「ラジオ歌謡」と名称も変遷していきました。

番組の背景と立ち上げ

1936年は日本社会において「エログロナンセンス」という風潮が強かった時代で、歌謡曲の中でも「エロ歌謡」が人気を集めた。しかし、当時のNHKの前身であるJOBKでは、より健全な歌謡を提供しようとする試みが持たれました。その結果として誕生したのが「国民歌謡」と呼ばれる番組でした。初回の放送が行われたのは1936年6月1日で、最初に放送された曲は「日本よい国」でした。

歴史と発展

「国民歌謡」の立ち上げにおいて、JOBKはまず「新歌謡曲」として始まり、番組の成功を受けて国民に親しみやすい歌を集中的に放送する形に進化しました。歌詞は当時の著名な詩人や作詞家によって書かれ、歌唱はさまざまな歌手によって行われました。特に、島崎藤村作詞の「椰子の実」が人気を博し、長年にわたって多くの歌手に歌われました。

戦時下の変化

1937年の盧溝橋事件以降は、国民歌謡の内容が徐々に戦時色を帯び始め、国民の精神的支えとなるようなプロパガンダ的要素が強まっていきました。中には、愛国心を強調する内容のものや、戦争を称える音楽が多数登場しました。1940年頃には、戦争に対する陽動的な歌が増加し、国民歌謡の本来の目的が薄れてしまうことにもつながりました。

放送の終了

国民歌謡は1941年に放送を終了しました。その後は、「われらのうた」として再スタートを図りますが、これは国民歌謡とは異なる内容となりました。最終回となった「歩くうた」は、時代の移り変わりを象徴するものでした。

放送された曲の影響

国民歌謡では数多くの曲が放送され、その中には現在も多くの人に愛されている作品が含まれています。具体的には「心のふるさと」や「祖国の柱」などが人気を集めました。これらは戦時中の文化、価値観を反映したものであり、国民の精神的な支えになりました。また、国民歌謡を通じて、多くの作曲家や詩人、歌手が本作に関与したことも、後の音楽シーンに大きな影響を与えました。

このように「国民歌謡」は、ただのラジオ番組としてではなく、当時の日本の文化や諸状況を反映し、さらにその後の日本の音楽の発展にも寄与する重要な存在でありました。

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