国民民主勢力

国民民主勢力

国民民主勢力（こくみんみんしゅせいりょく、National Democratic Force、略称NDF）は、ミャンマー（ビルマ）に存在した政党の一つである。ビルマ語では အမျိုးသားဒီမိုကရေစီအင်အားစု と表記され、United Democratic Front と呼ばれることもあった。

結成の背景と目的

この政党は、2010年に行われたミャンマー総選挙に際して組織された。当時のミャンマーでは、軍事政権によって民主化運動の中心であった国民民主連盟（NLD）が活動停止を命じられていた。そのような状況下で、NLDの元メンバーの一部が、選挙への参加こそが政治状況を変える道であると判断し、新たに結成したのがNDFである。

NDFの議長（党首）はタン・ニェインが務めた。党の本部は、かつての首都であったヤンゴンのタムウェ地区に置かれていた。彼らは政治的な主張として、民族に関する問題、民主主義、そして人権といった重要な課題を同時に解決していくべきであると掲げていた。

2010年総選挙への挑戦

NDFは、2010年7月9日に選挙管理委員会によって国内で38番目の政党として正式に登録された。同年の総選挙に向けて、NDFはおよそ160名の候補者を立てて臨んだ。

当時の選挙情勢において、NDFは国民統一党（NUP）や連邦団結発展党（USDP）といった他の有力政党と共に、全国的な規模で有権者に働きかける数少ない政党の一つと見なされていた。しかし、彼らは複雑な立場に置かれていた。というのも、結成の母体となったNLDの指導者であるアウンサンスーチー氏は軟禁下にあり、選挙自体の正当性を否定して参加しないよう広く呼びかけていたためである。スーチー氏という象徴的な指導者を欠いた状況での知名度向上は難しく、民主化勢力内でも選挙参加の是非を巡る意見対立が影響し、その立ち位置は微妙なものとなった。

一方で、NDFのような民主派を標榜する勢力が選挙に参加したことは、国内外に対して選挙の形式的な正当性を主張したい当時の軍事政権にとって、都合が良い側面があったという見方も存在した。

選挙結果とその評価

2010年総選挙の結果、NDFは一定の議席を獲得した。具体的には、連邦議会において、人民代表院で8名、民族代表院で4名の候補者が当選した。さらに、地域・州議会でも4名の当選者を出した。これらの当選者を合計すると16名となる。

特筆すべき点として、これらの当選者全員がヤンゴン地域から選出されたことが挙げられる。このことから、ヤンゴン地域に限定すれば、NDFは他の地域に比べて比較的健闘したと評価された。

また、NDFが国民民主連盟が伝統的に党のシンボルとして使用していた農民笠（ビルマ語でखမောက်、カマウッ）を採用したことは、国民民主連盟の支持者などの間で少なからぬ議論や論争を引き起こした。

その後の動向

2015年の総選挙では、NDFは前回を大きく上回る275名もの候補者を全国各地に擁立した。しかし、この選挙では国民民主連盟が地滑り的な勝利を収めたこともあり、NDFは非常に厳しい結果に直面した。擁立した全ての候補者が落選し、議席を失うこととなった。

この2015年の総選挙での敗北は、NDFの政治的な影響力を大きく低下させる結果となった。

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