国民民主連盟

国民民主連盟（NLD）：ミャンマー民主化運動の中心と、その光と影

国民民主連盟（NLD）は、ミャンマー（ビルマ）における主要な政党であり、長年にわたる軍事政権への抵抗と民主化運動の中心的な役割を果たしてきた組織です。党首はアウンサンスーチー、中央執行委員会議長はティンウーが務めています。

黎明期と軍事政権との闘い

1988年の8888民主化運動後、NLDは1990年の総選挙で圧勝し、議席の8割以上を獲得しました。しかし、軍事政権は選挙結果を無視し、政権を維持しました。この結果、NLDは長年にわたる弾圧に直面し、党幹部は逮捕・軟禁されるなど、厳しい状況下に置かれました。アウンサンスーチーは、自宅軟禁下においても民主化運動を続け、1991年にはノーベル平和賞を受賞しました。この受賞は国際的な注目を集め、軍事政権への圧力となりました。

一方、NLDは選挙結果を不服とした一部の急進派によって結成された亡命政府、ビルマ連邦国民連合政府（NCGUB）にも関与していました。しかし、NCGUBは国内外で大きな支持を得ることができず、NLD本部からも距離を置かれることとなりました。

スーチーの解放とNLDの苦闘

スーチーは1995年に解放されましたが、軍事政権との対立は続き、NLDは様々な妨害工作を受けました。NLDは、軍事政権の憲法制定プロセスを拒否したり、独自の議会を結成したりするなど、抵抗を続けました。しかし、軍事政権による弾圧は激しく、NLDの党員数は減少、党の組織力は弱体化していきました。民主化運動を支援する様々なグループによる蜂起やテロ行為も起こりましたが、NLDはこれらの行為とは距離を置く立場を取っていました。

2010年の総選挙では、NLDは参加を見送ったため、解党処分となりましたが、スーチーは同年中に釈放されました。

民政移管とNLD政権

2011年、NLDは政党として再登録を行い、補欠選挙で勝利しました。2015年の総選挙では、NLDは圧勝し、政権を獲得しました。しかし、2008年憲法により国軍の政治的関与は大きく、NLD政権は国軍の強い影響下で運営されました。アウンサンスーチーは国家顧問という新たなポストに就き、実質的な指導者となりましたが、大統領にはなれませんでした。

NLD政権は、経済発展や少数民族との和平交渉などに取り組みましたが、課題も多く残されました。少数民族との関係悪化、言論・報道の自由の後退、スーチーへの権力集中への批判などが挙げられます。NLD政権下でも、表現の自由に関する罪で多くの市民が起訴され、NLD自身がかつて弾圧された法律を反対者への弾圧に利用したと批判されました。

クーデターとNLDの現状

2021年2月、ミャンマー国軍はクーデターを起こし、NLD政権を打倒しました。アウンサンスーチーらNLD幹部は逮捕され、NLDは事実上解散させられました。その後、NLDは、クーデター政権に抵抗する動きを続け、国民統一政府など新たな組織を形成しましたが、軍事政権による弾圧は激しさを増し、多くの党員が犠牲になりました。2023年3月には、NLDは国軍の政党登録命令を拒否したため、正式に解散されました。

NLDへの批判

NLDは、スーチーへの権力集中、内部情報の非公開、若手への登用不足、少数民族との関係悪化、そして、言論・報道の自由の抑制など、様々な批判に直面してきました。NLDの党内は、スーチーへの個人的な忠誠心に基づく運営がなされていたとされており、党内部に異なる意見や多様な人材を登用することができていなかったという見方があります。NLDがかつて作成した「ビルマ革命の敵」とされるブラックリストの存在も、NLDの不寛容な姿勢を示す一例として挙げられます。

結び

NLDはミャンマーの民主化運動を牽引してきた政党ですが、その歴史には光と影が共存しています。長年にわたる軍事政権との闘い、民主化への貢献は高く評価される一方、党内部の閉鎖性、少数民族問題への対応、そして、民主主義の理想と現実との間のギャップは、今後のミャンマーの民主化の行方を左右する重要な要素として残されています。NLDの未来、そしてミャンマーの民主主義の行方は依然として不透明です。

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