国民総生産

国民総生産（GNP）について

国民総生産、略してGNPは、特定の期間において一国の国民が新たに生み出した商品やサービスの付加価値を合計したものです。この指標は、経済の景気を測るために用いられてきましたが、1993年からは国民経済計算の体系が改編され、国民総所得（GNI）が導入されたことにより、GNPの位置づけは相対的に低下しました。また、現在では国内総生産（GDP）が主に経済指標として重視されています。

GNPの定義と特徴

GNPにおける「国民」とは、その国に居住している人々を対象とします。このため、国籍にかかわらず、一定の期間（主に6か月以上）その国に住む全ての人が含まれます。ただし、国外に2年以上住む場合は非居住者と見なされ、GNPには含まれません。

GNPの計算にはいくつかのポイントがあります。まず、GNPは時間の価値を考慮に入れていないため、特定の時間に全ての生産を正確に計測することが難しいです。また、家庭内で行われる生産や自給自足など、公式に計上されることのない活動も存在します。このため、実際に生産される全ての財やサービスを網羅することは難しいのです。

さらに、GNPは財やサービスの産出量が増えても、その価値を正確に評価することができないという欠点もあります。例えば、震災による一時的な建設ブームは経済指標上は好ましいと示されますが、実際の経済健康を測る上では注意が必要です。

GNPとGDPの違い

GNPとGDPの違いについても理解が必要です。GDPは、国内で生産された付加価値に加え、海外で生産され、国内に送金された付加価値から、国内で生産された付加価値が国外に送金されたものを引いたものです。このように、GNPは以下の公式で表されます。
GNP = GDP + 第一次所得収支
また、実質GNPと実質GDPは、経済の動向において類似した傾向を示しますが、国の経済の実体を測る指標としては、GDPがますます重要視されるようになっています。

GNPからGNIへの移行

時間の経過と共に、GNPの概念は次第に廃れ、国民総所得（GNI）がその代替として広く使用されるようになってきました。GNIは「その国に居住している人々が得る全ての所得の総額」を示しており、国内総生産に国外からの純受取所得（苦労報酬や資産収入など）を加えたものと定義されます。このようにGNIは、福祉や生活水準を反映する指標としても機能します。

日本においても、内閣府は2000年から93SNAに基づく計算方法に移行し、GNPからGNIに移行したデータを発表しています。実質GNPと実質GNIの違いは主に輸出入価格の相違に基づくもので、所得データの取り扱いにおいて重要な役割を果たしています。

結論

国民総生産は国の経済活動を理解するための重要な指標でしたが、時代の変化に伴いその役割が変わりつつあります。現在はGDPやGNIの方が、より現実に即した経済状況を示すものとして注目されています。世界銀行によるGNPやGNIのランキングも各国の経済を比較する際に参考にされ、経済政策や国際関係において重要なデータとなっています。

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