国税不服審判所

国税不服審判所について

国税不服審判所は、財務省設置法に基づき国税庁に設置された、税務に関する不服審査を行うための特別な機関です。納税者が税務署の処分に不服がある場合、その不服を申し立て、中立的な立場で審査・裁決を行うことで、納税者の権利を保護し、税務行政の適正化を図る役割を担っています。

沿革

国税不服審判所は、1970年（昭和45年）に、それまでの協議団制度に代わって、国税庁の附属機関として設置されました。その後、1984年（昭和59年）には、より独立性を高めるため、附属機関から特別の機関へと移行しました。

職務

国税不服審判所の主な職務は、国税に関する法律に基づく税務署の処分に対する審査請求に対して、裁決を行うことです。具体的には、税務署が行った税額の決定や、その他の処分について、納税者からの不服申し立てを審査し、その処分が適正であったかどうかを判断します。この裁決は、最終的な行政処分として確定し、納税者と税務署双方を拘束します。

組織

国税不服審判所は、本部と全国12の支部で構成されています。本部は、東京都千代田区霞が関に所在し、各支部の統括や、審判所全体の管理・運営を行っています。各支部は、それぞれの管轄区域内の税務署の処分に対する審査請求を扱います。各支部の所在地は以下の通りです。

札幌国税不服審判所
仙台国税不服審判所
関東信越国税不服審判所
新潟支所
長野支所
東京国税不服審判所
横浜支所
金沢国税不服審判所
名古屋国税不服審判所
静岡支所
大阪国税不服審判所
京都支所
神戸支所
広島国税不服審判所
岡山支所
高松国税不服審判所
福岡国税不服審判所
熊本国税不服審判所
* 国税不服審判所沖縄事務所

国税不服審判所の幹部

国税不服審判所長は、裁判官からの出向が通例であり、組織全体を統括します。国税不服審判所次長は、財務省本省のキャリア官僚が務めます。また、各支部の長である首席国税審判官は、財務省本省または国税庁のキャリア官僚が務めています。主要な支部においては、東京国税不服審判所長は検察官からの出向、大阪国税不服審判所長は裁判官からの出向が通例です。

審判官

審査の実務を担当する国税審判官は、税務署長級の職員が務めます。その約半数は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格を有する任期付き公務員が登用されます。国税副審判官は副署長級、国税審査官は統括官級または上席級の職員が務めます。また、本部と主要な支部には、裁判官や検察官からの出向者も配置されています。

裁決の流れ

審査請求があった場合、まず各支部に所属する国税審判官が合議体を構成し、事件の調査・審理を行います。そして、合議体での議決に基づき、国税不服審判所長が裁決を行います。ただし、実際の裁決権は各支部の首席国税審判官に委任されており、多くの場合は専決処理されます。本部からは、各支部での事件処理に対して、助言や指導が行われます。

国税審査分科会

国税不服審判所長が、国税庁長官の解釈と異なる裁決を行う場合や、法令解釈の重要な先例となる裁決を行う場合で、納税者の主張を認めるものであり、かつ国税庁長官が相当と認める場合を除き、国税審査分科会が調査審議を行います。国税審査分科会は、財務大臣が指名した国税審議会委員で構成され、国税庁や国税不服審判所の幹部が出席して、専門的な立場から議論が行われます。

国税不服審判所の設立経緯

国税不服審判所は、納税者の不服に対して、より公正かつ中立な判断を下すために設立されました。設立以前の協議団制度では、税務署長の指揮下にあり、税務署の判断を覆すことが難しいという批判がありました。国税不服審判所の設立により、より独立した立場で審査が行われるようになり、納税者の権利が守られるようになりました。

まとめ

国税不服審判所は、納税者の権利を保護し、税務行政の適正化を図るための重要な機関です。専門知識を有する審判官が、税務署の処分に対する不服を中立的な立場で審査し、納税者の救済を図っています。

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