国立総合大学

国立総合大学（こくりつそうごうだいがく）とは、国が設置・運営する大学のうち、人文科学、社会科学、自然科学、そして医学の四つの主要な学問領域全てを包括的に擁する教育研究機関を指す呼称です。これは、特定の分野に特化せず、幅広い分野の知識と研究を推進する総合大学としての性格と、その設置主体が国であるという両面を示しています。

この「国立総合大学」という名称やそれに類する概念は、日本に限らず世界各国で見られます。例えば、ロシアには極東連邦大学の前身である「ロシア極東国立総合大学」や、モスクワ大学の正式名称である「M.V.ロモノーソフ・モスクワ国立総合大学」、サンクトペテルブルク大学の正式名称「サンクトペテルブルク国立総合大学」など、歴史と伝統を持つ大学がこの名を使用しています。その他にも、キルギスの「キルギス国立総合大学」、ノヴォシビルスクの「ノヴォシビルスク国立総合大学」、サハリンの「サハリン国立総合大学」、メキシコの「メキシコ国立総合大学」など、様々な国に同名の大学が存在します。これらの大学もまた、それぞれの国において学術研究の中心的な役割を担っています。

日本において「国立総合大学」という言葉は、特に戦前から戦後にかけての大学制度の変遷を語る上で重要な意味合いを持っています。かつて高等教育機関の頂点に位置付けられていた「帝国大学」は、1947年10月以降、「国立総合大学」という総称で呼ばれることになりました。これは、同年9月に「帝国大学令」および「帝国大学官制」がそれぞれ「国立総合大学令」、「国立総合大学官制」と改称されたことに伴うものです。

この法令改正を受け、国内に存在した七つの帝国大学、すなわち北海道帝国大学、東北帝国大学、東京帝国大学、名古屋帝国大学、京都帝国大学、大阪帝国大学、九州帝国大学は、翌10月、それぞれの正式名称から「帝国」の二文字を削除しました。これにより、これらの大学は現在の名称に近い形となりました。例えば、東京帝国大学は東京大学に、京都帝国大学は京都大学に、というように変わったのです。この名称変更は、戦後日本の新たな国家体制の下で、大学もまた新たなスタートを切る象徴的な出来事でした。

ただし、注意すべき点として、この時点でのこれらの大学は、まだ戦前の制度に基づく「旧制大学」であり、現在の「新制大学」制度が確立されるのはその後のことです。したがって、「国立総合大学」という総称は、制度上の区分というよりは、旧帝国大学の流れを汲む、国が設置した総合大学群を指す歴史的な呼称としての側面が強いと言えます。

この名称は、学術の中心として多岐にわたる研究と教育を担ってきたこれらの大学の性格をよく表しています。人文・社会・自然・医という広範な分野を包含することで、知の統合と新しい学問領域の創出を目指すという、総合大学本来の理念がそこに込められています。

「国立総合大学」という言葉は、「国立綜合大学」と表記されることもあります。「帝国大学」という言葉と密接に関連しており、戦後の一時期における日本のトップレベルの国立大学群を指す歴史的用語として、日本の大学史を理解する上で欠かせない概念となっています。

もう一度検索