国立高度専門医療研究センター

概要

「国立高度専門医療研究センター」は、日本の医療・医学研究において中心的な役割を担う国立研究開発法人グループの総称です。国民の健康に大きな影響を及ぼす難病や重篤な疾患に対し、原因の究明、治療法や予防法の研究開発、高度かつ専門的な医療の提供、そして医療技術者の育成を一体的に推進することを目的としています。

現在、以下の5つの法人がこの総称のもとに活動しています（2025年4月1日時点）。

国立研究開発法人国立がん研究センター
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

各センターは、それぞれの専門分野における研究所と病院を擁し、研究活動と医療活動の両方を積極的に行っています。

各センターの専門分野

各センターは、特定の疾患や健康課題に特化した高度な取り組みを行っています。

国立がん研究センター: がんをはじめとする悪性新生物に関する高度で専門的な医療技術の向上を目指します。
国立循環器病研究センター: 循環器病分野における高度で専門的な医療技術の向上を目指します。
国立精神・神経医療研究センター: 精神疾患や神経疾患、さらに精神保健に関する高度で専門的な医療と研究開発を担います。
国立成育医療研究センター: 児童が健やかに生まれ育つために特に治療が必要な疾患（成育に係る疾患）に関する高度で専門的な医療の向上を目指します。
国立長寿医療研究センター: 加齢に伴って発生する疾患に関する高度で専門的な医療の向上を目指します。

過去には国立国際医療研究センターもこのグループに属していましたが、2025年4月1日に国立健康危機管理研究機構の発足に伴い解散し、現在の5法人体制となりました。

組織形態の変遷

国立高度専門医療研究センターの組織形態は、時代の変化や行政改革の中で変遷を遂げてきました。

かつてこれらの組織は、厚生労働省の施設等機関である「国立高度専門医療センター」（ナショナルセンター、NC）として運営されていました。2004年には、旧国立病院・療養所の多くが独立行政法人国立病院機構へ移行しましたが、ナショナルセンターは特定の政策医療に特化する組織として、引き続き厚生労働省のもとに留まっていました。

その後、行政改革の一環として、2006年の「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」により、2010年度における特別会計の廃止と各センターの独立行政法人への移行方針が定められました。これを受けて、2008年には「高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律」が成立し、2010年4月1日をもって、旧ナショナルセンターの各組織は独立した独立行政法人へと移行しました。

この移行により、各センターは単一の独立行政法人となり、国立病院機構のような多数の病院を統括する形とは異なり、それぞれが独立した法人格を持つことになりました。職員の身分も、国家公務員から非公務員型へと変更されました。

さらに、研究開発能力の強化を目的とした法改正等を経て、2015年4月1日からは「国立研究開発法人」へと組織形態を変え、現在に至ります。

業務内容の重点化

独立行政法人化、そして国立研究開発法人化を経て、これらのセンターの業務内容にも変化が見られます。

旧組織では、厚生労働省設置法に基づき、診断・治療、調査・研究、技術者研修などが業務とされていました。しかし、独立行政法人化を定めた法律では、「調査、研究及び技術の開発」がより前面に打ち出され、これらの業務に密接に関連する医療提供、技術者研修、成果の普及、政策提言などが目的として明記されました。これは、単なる高度医療提供施設にとどまらず、国家的な研究開発の中核拠点としての役割が強化されたことを示しています。

国立高度専門医療研究センターは、今後も日本の医療技術と医学研究の発展に大きく貢献していくことが期待されています。

国立高度専門医療研究センター