国鉄セキ1形貨車

国鉄セキ1形貨車

国鉄セキ1形貨車は、かつて日本国有鉄道（国鉄）およびその前身である鉄道省などに在籍した30t積の石炭車です。ここでは、セキ1形を種車として改造製作されたホキ150形についても解説します。

概要

厳密には、国鉄の「セキ1」という形式は、官営鉄道時代の明治14年に製造された石運車にも明治44年から廃車となった大正4年まで付けられていました。しかし、これは偶然同名になっただけで、構造も記号の意味も全く異なります。そのため、区別する場合は「セキ1M44」と表現されます。

セキ1形の誕生と変遷

セキ1形は、製造当初はオテセ9500形と称し、1911年（明治44年）から1913年（大正2年）にかけて531両（オテセ9500 - オテセ10030）が製造されました。当初の積載荷重は24tでした。

1918年（大正7年）から1922年（大正11年）にかけて、オテセ9500形全車がオテセ11000形（オテセ11000 - オテセ11530）に改造されました。この改造は、積載量を24tから30tに増やす増トン工事でした。6tの積載量増加は、オテセ9500形を133両増車するのと同じ効果があり、車両数が増えないため保守修繕費用の低減も期待されました。

改造内容は、オテセ9500形の側板および妻板上部を460mmかさ上げし、容量を大きくするものでした（28.3m3 → 35.6m3）。当初、かさ上げ部分は木製でしたが、後に鋼製に改造されました。

1928年（昭和3年）の車両称号規程改正により、当時在籍していた526両のオテセ11000形がセキ1形（セキ1 - セキ526）となりました。大半の車両は北海道内のみで運用されましたが、少数の車両は岡山県の伯備線石蟹駅や九州の松浦線へ転属し運用されました。

製造ロットによる多少の違いはあるものの、全長は8,687mm、全幅は2,702mm、全高は3,327mm、自重は13.7t - 15.0t、換算両数は積車4.5、空車1.6でした。セキ1形は1964年（昭和39年）に形式消滅しました。

ホキ150形への改造

ホキ150形は、1954年（昭和29年）に20両（ホキ150 - ホキ169）がセキ1形を国鉄工場で改造して製作された30t積の石灰石専用ホッパ車です。オテセ9500形から数えると、実に4回も名称が変更された貨車です。

石灰石は石炭よりも比重が大きいため、同じ容積で積載すると30tを超えてしまいます。そのため、セキ1形の車体の上半分を全高2,330mmの位置で切断し、容積を小さくしました（35.6m3 → 21.2m3）。つまり、オテセ9500形からオテセ11000形に改造した際のかさ上げ部分は全て撤去され、さらにそれ以上切り取られた形になります。

満載せずに容積の50%程度で積載することでも対応できますが、使用予定線区である青梅線の積込設備の建築基準が小さく、種車のままでは入線できないため、切断する必要がありました。

製造ロットによる多少の違いはあるものの、全長は8,687mm、全幅は2,702mm、全高は2,535mm、自重は15.2t、換算両数は積車4.5、空車1.4、台車はTR17、車体塗色は黒で最高速度は65km/hでした。しかし、老朽化が著しかったため、改造からわずか3年後の1957年（昭和32年）7月1日より廃車が始まり、1959年（昭和34年）1月20日に最後の1両（ホキ150）が廃車となり、形式消滅しました。

各私鉄への譲渡

セキ1形は、国鉄を離れ、多くの私鉄へ譲渡されました。主な譲渡先は以下の通りです。

雄別炭礦鉄道
旭川電気軌道
天塩鉄道（後の天塩炭礦鉄道）
三菱美唄鉄道
太平洋石炭販売輸送

保存車

現在、三菱大夕張鉄道で使用されていたセキ1（元国鉄セキ118）が、北海道夕張市南大夕張駅跡に保存されています。

参考文献

鉄道公報
『日本の貨車-技術発達史-』（貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年）
吉岡心平『RM LIBRARY 151 無蓋ホッパ車のすべて（上）』（ネコ・パブリッシング、2012年）ISBN 978-4-7770-5322-3
* 澤内一晃・星良助『北海道の私鉄車両』（北海道新聞社、2016年）ISBN 978-4-89453-814-6

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