国鉄デハ6285形電車

デハ6285形について

デハ6285形は、日本国有鉄道の前身である鉄道院および鉄道省に搭載されていた木造直流電車です。1913年から1914年にかけて、東京の鉄道院新橋工場にて製造されたこの形式は、デハ6280形の増備版として位置づけられています。

概要と製造

この電車は、1913年から1914年にかけて12両が製造されました。当初は「ナデ6110形」として知られていましたが、製造後まもなく、1914年8月に「デハ6285形」に改名されました。この系列は、両運転台式の制御電動車となっており、全長は約16メートル、木製車体が特徴です。

客室への出入りは両端から可能ですが、出入り口の幅は狭く910mmに設定されていて、開き戸が用いられています。また、車体中央には引戸式の扉があり、空気圧で自動的に動く踏段も設けられています。運転台のデザインは三面折妻型を採用しており、簡素な形状で、貫通扉が中央に位置しています。

特徴と技術

側面の窓は下降式で、窓の配置は1D222D222D1となっています。さらに、屋根にはモニター屋根が採用され、水雷形通風器が両サイドに4個ずつ取り付けられています。車両幅は2500mmで、小さな中央線でも使用できるように設計されました。

この電車の台車は、初期の6両に試験的に輸入された3種の台車を設置しましたが、その他の両は釣合梁式の標準形に改められました。運転のための制御装置は間接式で、モーターにはゼネラル・エレクトリック製のものが用いられていました。集電には、両側にトロリーポールが設置されています。

火災による影響

デハ6285形の運命を大きく変えたのは、1916年11月24日に発生した新宿電車庫の火災でした。この火災によって、多くの電車が焼失し、デハ6285形の4両も被害を受けました。その後、燃え残った電装部品は新製車両に再利用されています。

標準化改造

1920年から1921年にかけて、残った8両に対して標準化改造が行われました。主な改造点は、客用扉を開き戸から引戸に変更し、自動踏み段を撤去したことです。外観の基本形状は、三面折妻のまま維持されています。

使用の停止とその後

8両は中央線および山手線で運行されましたが、1925年に電圧が上昇したことで運行が停止されました。その際、7両が目黒蒲田電鉄に譲渡されました。ただし、この中のいくつかは阪神急行電鉄に再譲渡されました。また、1両は電装が解除され、他の形式に編入されました。

1928年には車両称号の改正が行われ、残っていた1両が新たにサハ6形として登録されましたが、1931年には解体されています。

保存と現状

デハ6285形の一部は、1972年に廃車となったデワ101が復元され、日本の鉄道100年を記念して大井工場で保存されました。1987年には東日本旅客鉄道に引き継がれ、動態復元され、現在は鉄道博物館で保存展示されています。さらに、2017年には国の重要文化財に指定され、その価値が認められています。

まとめ

デハ6285形は、日本の鉄道史において重要な役割を果たし、木造電車としての独特の特徴を持っています。その製造過程や運用、そして保存状態を通じて、歴史的価値が高い形式とされています。

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