国鉄ワキ1形貨車

国鉄ワキ1形貨車について

国鉄ワキ1形貨車は、かつて日本国有鉄道（国鉄）で使用されていた有蓋貨車です。この車両は特別小口扱便専用の貨物輸送を目的として、鉄道省によって製造されました。1930年から1940年までに290両が新製され、その後1960年から1962年にかけて、老朽化した冷蔵車を改造して100両が追加されました。つまり、国鉄で初めて新製された「ワキ」の形式として注目される存在です。

構造と設計特徴

ワキ1形の基本構造は、1929年に製造が始まったワム21000形を基にしたもので、二重羽目構造が特徴的です。外板は鋼製で、内側は木製の羽目板が施されており、全長は約13メートルです。車両の側面には大型の引戸が2つ設けられており、これにより荷役作業が効率的に行えるようになっています。また、車内には窓や貫通扉、さらには電灯が備わっています。

台枠には溝形鋼が使用され、自重は20.0から21.5トンと軽量で、台車には新たに開発されたTR24型鋳鋼製台車が装備されています。設計最高速度は85km/hですが、有事の際には最大95km/hでの運行が可能とされていました。

製造時期による分類

ワキ1形は、製造時期によって4つの異なるタイプに分類されます。これらはそれぞれ形式と寸法が異なり、特に改良点が多く見られます。

• - タイプ1（1930年製）: 車体はリベット組立で、片開きの側引戸を持ち、貫通扉と木製内張りはありません。
• - タイプ2（1934-1937年製）: タイプ1より若干寸法が伸び、内張りが施されるようになりました。
• - タイプ3（1937-1940年製）: 両開き引戸や窓の増設が施され、屋根上には通風器も設けられました。
• - タイプ4（1960-1962年製）: 冷蔵車を再利用し、現代的な設計に基づく改良が行われました。

戦前の運用と特別小口扱便

この車両は1927年から始まった特別小口扱輸送の専用車として運用されました。特に宅急便に使用された際には、車体には目立つ帯が巻かれ、「宅扱」との表示が施されました。太平洋戦争中は、特別扱いの運用が廃止され、一般輸送に切り替えられた時期もありますが、その収容力から代用客車としても活躍しました。

戦後の運用と改造

戦後は鉄道輸送の需要が急増したため、本形式は客車としても使用され、一部は連合国軍に接収されました。1950年代には改造が進み、緩急貨車としての用途も拡大しました。各種改造に対応し、運用形態も多様化しました。また、バラ積み輸送への使用もあり、穀物などの貨物を扱う際にも重宝されました。

廃車と形式消滅

ワキ1形貨車の廃車手続きは1971年から始まり、1979年度に形式が消滅しました。その背景には、新たな貨車形式の登場や、時代のニーズに合わせた貨物輸送体系の変化がありました。現在では、その歴史的価値から博物館などで保存されている車両もあります。

同型車について

ワキ1形貨車の設計を基にした同型車は、台湾やサハリン向けに製造されたものも含まれています。これらの車両は、国鉄の技術力を示す具象的な証明として現在でも評価されています。

国鉄ワキ1形貨車は、日本の鉄道貨物輸送の歴史において重要な役割を果たしました。その多様な運用形態と改造の歴史は、今なお多くの人々に興味を持たれています。

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