国鉄9000形蒸気機関車

9000形蒸気機関車：北海道の炭鉱輸送を支えたアメリカ生まれの力持ち

9000形は、北海道炭礦鉄道がアメリカのボールドウィン社に発注した蒸気機関車です。石炭輸送を担うため8両が製造され、後に国有鉄道（国鉄）へと引き継がれました。ここでは、同系の9030形、そして美唄鉄道1形についても解説します。

9000形（9040形）

概要

9000形は、北海道炭礦鉄道が石炭輸送を目的に輸入したテンダー式蒸気機関車で、ボールドウィン社の種別呼称は10-26Eです。1893年から1898年にかけて製造され、日本初の2-8-0（1D、コンソリデーション）形という車軸配置を採用しました。官設鉄道が後に輸入した9200形が「大コン」（大型コンソリデーション）と呼ばれたのに対し、本形式は「小コン」（小型コンソリデーション）として親しまれました。

外観は典型的なアメリカ古典機のスタイルで、砂箱の形状や蒸気ドームからL字形に取り付けられた汽笛、運転室前のボイラー上に取り付けられた鐘などが特徴です。運転室の床は炭水車の台枠上面と同じ高さに揃えられ、腰が低く、どこか重厚な印象を与えます。また、第1・第2動輪間、第3・第4動輪間の軸距に対して、第2・第3動輪間の軸距がわずかに長くなっています。後期製造車では、火室上に砂箱が追加され、鐘の位置が前部の砂箱と蒸気ドームの間に移動しました。

主要諸元

全長: 14561mm
全高: 3761mm
軌間：1067mm
車軸配置: 2-8-0(1D)
動輪直径: 1067mm
弁装置: スチーブンソン式アメリカ形
シリンダー（直径×行程）: 406mm×508mm
ボイラー圧力: 9.8kg/cm2
火格子面積: 1.55m2
全伝熱面積: 106.5m2
煙管蒸発伝熱面積: 86.0m2
火室蒸発伝熱面積: 20.5m2
ボイラー水容量: 3.5m3
小煙管（直径×長サ×数）: 51mm×3499mm×145本
機関車運転整備重量: 39.31t
機関車空車重量: 35.80t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 36.16t
機関車動輪軸重（最大・第3動輪上）: 10.89t
炭水車運転整備重量: 18.45t
炭水車空車重量: 9.83t
水タンク容量: 6.6m3
燃料積載量: 1.85t

経歴

北海道炭礦鉄道ではG形と称されましたが、後にヘ形に変更。国有化後の1909年には9000形（9000 - 9007）と定められました。1912年には、輸入されたマレー式機関車に形式を譲るため9040形（9040 - 9047）に改められましたが、結局マレー式機関車には別の形式が与えられたため、改番は無意味に終わりました。

国有化後は、岩見沢、倶知安、釧路などに配置され、石炭列車の牽引に活躍。1937年からは軌間を改造され中国へ輸出されました。1933年から1949年にかけて廃車が進み、4両が雄別炭礦鉄道、定山渓鉄道、羽幌炭礦鉄道、寿都鉄道に譲渡されました。

譲渡

9045：雄別炭礦鉄道→寿都鉄道
9041：定山渓鉄道
9042：羽幌炭礦鉄道
9046：寿都鉄道

9030形

概要

9030形は、9000形の改良型として1903年に北海道炭礦鉄道がボールドウィン社に発注した機関車で、3両が製造されました。9000形とほぼ同形同大で、製造当初から空気ブレーキ装置を装備していた点が大きな特徴です。外観は9000形後期製造車とよく似ています。

主要諸元

全長: 15062mm
全高: 3772mm
軌間：1067mm
車軸配置: 2-8-0(1D)
動輪直径: 1067mm
弁装置: スチーブンソン式アメリカ形
シリンダー（直径×行程）: 406mm×508mm
ボイラー圧力: 11.3kg/cm2
火格子面積: 1.31m2
全伝熱面積: 99.0m2
煙管蒸発伝熱面積: 90.2m2
火室蒸発伝熱面積: 8.8m2
ボイラー水容量: 4.2m3
小煙管（直径×長サ×数）: 51mm×3489mm×160本
機関車運転整備重量: 42.09t
機関車空車重量: 36.93t
機関車動輪上重量（運転整備時）: 36.93t
機関車動輪軸重（最大・第3動輪上）: 11.69t
炭水車運転整備重量: 19.51t
炭水車空車重量: 9.76t
水タンク容量: 7.4m3
燃料積載量: 1.73t

経歴

北海道炭礦鉄道では形式カと付番されましたが、後に改められました。国有化後の車両形式称号規程では9030形（9030 - 9032）と改められています。終始夕張地区に配置され、石炭列車の牽引に使用されましたが、1925年に全車が廃車。譲渡や保存はされていません。

美唄鉄道1形

ボールドウィン製の同系列に属する機関車として、1918年に美唄鉄道向けに1両輸入されました。この機関車は、元々ニカラグア・ナショナル鉄道に納入された機関車をメーカーが再製したもので、国有鉄道の9000形、9030形とは直接的な関係はありません。大夕張炭礦専用鉄道でも使用されました。

美唄鉄道では1形と称しましたが、1950年に雄別炭礦鉄道に譲渡された際、9046に改番されました。この9046という番号は、過去に他の2両の機関車も使用しており、合計3両の機関車が「9046」を名乗ったことになります。

もう一度検索