羽幌炭礦鉄道

羽幌炭礦鉄道：石炭輸送を担った鉄道の記憶

羽幌炭礦鉄道は、かつて北海道苫前郡羽幌町で炭鉱と鉄道路線を経営していた炭鉱会社であり、鉄道会社でした。札幌証券取引所にも上場していましたが、社名とは異なり、本業は石炭採掘でした。

炭鉱と鉄道

羽幌炭礦鉄道は、羽幌、上羽幌、三毛別に坑口と選炭設備を有していました。特に羽幌運搬竪坑は、近代的な塔櫓捲（ワインディングタワー・タワーマシーン）形式の竪坑櫓を持ち、日本国内で2024年現在唯一現存するビルディングタワー式の竪坑櫓として知られています。これは、九州の福岡県志免町に現存する海軍炭鉱の志免竪坑櫓の近代形にあたります。

鉄道路線は、自社の羽幌炭鉱から産出される石炭を搬出するために国鉄名羽線（名寄 - 羽幌間）を先行して建設したものでした。1941年に開通しましたが、1970年の炭砿の閉山とともに、その役割を終えました。

路線データ

区間：築別 - 築別炭砿 16.6km
軌間：1067mm
駅数：8（起終点駅を含む）
電化区間：なし（全線非電化）
複線区間：なし（全線単線）
閉塞方式：タブレット閉塞式
交換可能駅：駅一覧を参照
最小曲線半径：200m
最急勾配：16‰
軌条：30kg
橋梁：11箇所
隧道：なし
機関庫・付属工場・車庫：築別炭礦駅構内

歴史

苫前炭田での石炭採掘は1895年頃に始まりましたが、適切な運搬手段がなく、大規模な開発には至りませんでした。1918年頃に鈴木商店（後の双日）が鉱区を買収し、1931年頃より開発に着手しました。

当時、国鉄羽幌線が順次開業しており、太陽曹達は羽幌鉄道を設立。1938年に鉄道敷設免許を申請しました。1941年12月14日に築別 - 築別炭鉱間が開業しましたが、これは太平洋戦争開戦のわずか6日後のことでした。

戦後は上羽幌坑と羽幌坑の開坑により出炭量が増加し、沿線人口も増加しました。1958年からは気動車の運行を開始し、国鉄定期列車に併結して羽幌駅まで乗り入れを行いました。

会社更生手続と閉山

1970年9月1日、羽幌炭礦鉄道は札幌地方裁判所に会社更生手続開始申立書を提出しました。理由として、石炭産業の将来不安による人員不足や、採炭切羽が断層にぶつかったこと、取引会社の経営破綻による売掛金回収不能などが挙げられました。

しかし、2か月後の11月1日には更生を断念して閉山を決定。鉄道事業も12月15日に廃止されました。

鉄道車両

羽幌炭礦鉄道では、蒸気機関車、ディーゼル機関車、気動車、客車、貨車など、様々な車両が活躍しました。

蒸気機関車：1150形、5860形、9040形、8100形、C11形、8620形
ディーゼル機関車：DD13形
気動車：キハ1000形、キハ10形、キハ22形
客車：ハフ1形、フハニ100形、3394形、ホハフ5形、ニ1形、オハフ19100形
貨車：ワム200形、ワフ1形、ト500形、トム10形、トラ50形
* 雪かき車：キ1形、キ100形

特にキハ22形は、国鉄線乗り入れのためにATS-S形が搭載され、茨城交通（現・ひたちなか海浜鉄道）に譲渡後も活躍しました。キハ223は羽幌炭礦色に変更の上、埼玉県さいたま市緑区にある「ほしあい眼科」にて静態保存されています。

駅一覧

築別駅 - 五線駅 - 七線沢駅 - 上築別駅 - 曙光駅 - 曙駅 - 桜ケ丘駅 - 古賀町駅 - 築別炭砿駅

現在

羽幌炭礦鉄道は廃止されましたが、その歴史は人々の記憶に残り、一部の施設や車両は保存されています。また、鉄道跡地は道路や遊歩道として活用され、その面影を偲ぶことができます。

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