国鉄DD10形ディーゼル機関車

DD10形ディーゼル機関車

DD10形ディーゼル機関車は、1930年代に日本国有鉄道（国鉄）が試作した電気式のディーゼル機関車です。この機関車の開発は、当時の日本国内の工業生産力の向上に伴い、ディーゼルエンジンの技術が進展したことを背景に行われました。特に入換や小単位の旅客列車の牽引に適したモデルが求められ、このような背景の中で本形式が誕生しました。

概要と開発の背景

DD10形は、国鉄が初めて採用した電気式のディーゼル機関車として、既存のDC10形およびDC11形の技術や使用実績を基に設計されました。また、満州鉄道向けに製造されたジキイ型機関車の経験も活かされており、全体的に優れた信頼性を持つ設計となっています。

車体構造

この機関車の車体は全溶接構造で、箱型の形状をしています。電気機関車と同様に、妻面中央には貫通扉が設けられ、乗降はデッキから行われます。塗装には特有のぶどう色1号が用いられています。

主要機器

機関

DD10形には新潟鐵工所製のK8C形エンジンが搭載されています。このエンジンは縦型直列8気筒で、4サイクルのものです。また、最新式の渦流室式副燃焼室を備えており、定格出力は600 ps/900 rpmです。特筆すべきは、ボアを縮小して高回転化を狙った手堅い設計であり、故障が少ないという点で、同時期の機関よりも優位に立っています。

駆動システム

DD10形の動力伝達方式は電気式が採用されており、これはDC11形を参考にしています。従来の歯車式システムには複雑さがあり、故障が多かったため、より信頼性の高い電気式を選択しました。

台車

この機関車では、3軸台車が2組採用されています。そのうちの1軸は小径車輪で走軸として利用されており、さらに両端に直流直巻電動機が搭載されています。このユニークな台車設計は、後のED18形に流用されました。

製造と運用

DD10形は、1935年に芝浦製作所と日立製作所が共同で電気部分を製造し、川崎車輛が車体を組み立て、完成しました。完成後は小山機関区に配置され、入換作業や試験に使用されましたが、騒音や振動の問題から本来の性能を十分に発揮できませんでした。

その後、戦時体制下で石油燃料の使用が制限され、運用停止となり、1947年には正式に廃車となりました。廃車後も大宮工場で長期間保管されましたが、1965年に解体され、その姿は過去のものとなりました。

主要諸元

• - 全長：12m
• - 運転整備重量：71t
• - 機関：新潟鐵工所製K8C形（直列8気筒）×1基
• - 軸配置：A1A+A1A
• - 1時間定格出力：600ps/900rpm
• - 動力伝達方式：電気式
• - 主電動機出力：100kW×4基

DD10形ディーゼル機関車は、技術進化の象徴であると同時に、当時の社会が直面した運用上の課題を表す機関車でもありました。

もう一度検索