国鉄ED56形電気機関車

ED56形電気機関車

概要

ED56形は、日本国有鉄道（国鉄）の前身である鉄道省が、イギリスから輸入した直流用電気機関車です。この機関車は、三菱電機が海外メーカーとの技術提携を模索する中で研究用として輸入したものを、鉄道省が買い取ったという経緯を持ちます。公式には、1927年（昭和2年）にメトロポリタン＝ヴィッカース社で1両のみ製造されたとされていますが、現車の銘板には1923年（大正12年）製と記載されており、鉄道省への入籍は1928年（昭和3年）となっています。また、機械部分はスイスのS.L.M.（スイス・ロコモティブ・アンド・マシン・ワークス）が製造を担当しました。

特徴

車体は箱型ですが、運転台部分で幅が一段狭められ、妻板は大きな後退角を持つ3面折妻という特徴的な形状をしています。この機関車の最大の特徴は、電動機を4基搭載するD形機でありながら、電動機6基のF形機と同等の直列、直並列、並列の3段組合せ制御を採用している点です。これは、本形式が南アフリカの直流3000V用1E形電気機関車をベースに、1500V用に再設計されたためと考えられます。ED56形の電動機の端子電圧は1500V（通常は750V）です。

運用

ED56形は、ED57形と同様に東海道本線で旅客列車を牽引しました。その後、中央本線の電化に伴い八王子機関区へ移り、飯田町－八王子間で使用されました。しかし、1形式1両という希少性、特殊な制御方式、狭く後方視認性の悪い運転台などが問題となり、1940年（昭和15年）3月に大宮工場で貨物用に歯車比が変更され、ED23形に改形式されました。この改造で、車体の前面が真四角にされ、3段組合せ制御方式も通常の2段組合せ方式に変更され、ED56形の特徴は失われました。その後、久里浜支区に配置され、横須賀線で使用されました。

終焉

ED23形は、1958年（昭和33年）に休車となり、1960年（昭和35年）5月に廃車となりました。その後、解体処分され、現存していません。

主要諸元

以下にED56形および改造後のED23形の主要諸元を示します。（括弧内はED23形の諸元）

全長: 13250mm
全幅: 2800mm
全高: 3870mm
重量: 61.44t (59.85t)
電気方式: 直流1500V
軸配置: B+B
主電動機: MT23形（端子電圧1350V時定格出力230kW、定格回転数660rpm）×4基
歯車比（動輪）: 22:75＝1:3.41 (18:79＝1:4.39)
1時間定格出力: 920kW
1時間定格引張力: 6600kg (9600kg)
1時間定格速度: 50.0km/h (34.6km/h)
最高運転速度: 85km/h (65km/h)
動力伝達方式: 歯車1段減速、吊り掛け式
制御方式: 非重連、抵抗制御、3段組合せ制御 (2段組合せ)、弱め界磁制御
制御装置: 電動カム軸接触器式併用電磁空気単位スイッチ式
ブレーキ方式: EL14A空気ブレーキ、手ブレーキ



この機関車は、日本の鉄道史において貴重な存在であったと言えるでしょう。

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