国防省 (カナダ)

カナダ連邦政府の国防省（英語: Department of National Defence、DND／仏語: Ministère de la Défense nationale、MDN）は、カナダの国益と価値観を国内外で守る役割を担う重要な省庁です。カナダの主要な政府機関の中でも、予算規模、職員数、保有する建築物の数において、最大級に位置づけられる省の一つです。

国防省は、文民組織として、カナダの防衛政策の策定、国防体制の運営、そしてカナダ軍への後方支援を主な任務としています。文民組織としての頂点には、国防大臣を補佐する高官である国防次官が置かれており、次官は首相の助言に基づいて、カナダの元首である女王陛下の代理を務める総督によって任命されます。

国防省と並び、カナダの防衛を担うのがカナダ軍という軍事組織です。興味深い点は、カナダ軍は国防法（National Defence Act）の定めにより、国防省から法的に分離されており、独自の指揮系統をもって運営される独立した組織と位置づけられていることです。カナダ軍の最高責任者は国防参謀総長（Chief of the Defence Staff）であり、このポストもまた、首相の助言に基づき総督によって任命されます。国防参謀総長は、カナダ陸軍、カナダ海軍、カナダ空軍といった各軍およびその他の作戦部隊を直接指揮・統率しています。

しかし、実際の運用においては、国防省（文民）とカナダ軍（軍事）は、一体として「国防チーム（The Defence Team）」と称され、国防大臣のリーダーシップのもと、極めて緊密な連携を保ちながら任務にあたっています。国防大臣は内閣の一員としてこの「国防チーム」全体を統括しており、国防次官と国防参謀総長はともに大臣を支える立場にあります。国防次官と国防参謀総長の両者の指揮下に入る組織も一部に存在し、文民部門と軍事部門の連携を具体的に示しています。

国家元首である女王（総督が代理）は、カナダ軍全体の最高司令官でもあり、理論上は「国防チーム」の枠外から、カナダ軍すべてに対して直接命令を発することが可能です。

国防大臣が総括するカナダの国防体制（Defence Portfolio）は、カナダ軍や国防省に加えて、サイバーセキュリティ等を担当する通信保安機構（Communications Security Establishment、CSE）、防衛技術の研究開発を行う国防研究開発センター（Defence Research and Development Canada、DRDC）など、複数の関連組織を含んでいます。国防省自身はこれらの関連組織を直接管轄するわけではありませんが、大臣の補佐機関として、この広範な国防体制が円滑に機能するための政策支援や調整業務を担う、不可欠な存在です。国防省は、カナダの平和と安全を維持するための戦略的な基盤を提供し、複雑な国家安全保障環境において、カナダが適切に対応できるよう支え続けています。

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