国際諜報局

国際諜報局 (The Ipcress File)

『国際諜報局』は、1965年に公開されたイギリスのスパイ映画。レン・デイトンの小説『イプクレス・ファイル』を原作とし、冷戦時代を舞台に、従来のヒーロー像とは異なる主人公が活躍するスパイ・サスペンスです。

概要

イアン・フレミングのジェームズ・ボンドが人気を博していた当時、その対極をなす存在として生み出されたのが、本作の主人公ハリー・パーマーです。原作は、ボンドを皮肉るような韜晦に満ちた作風でしたが、プロデューサーのハリー・サルツマンが映画化を決意。音楽には初期ボンド映画を手掛けたジョン・バリーを起用しています。

シリアスな脚本、シドニー・フューリー監督の硬質な演出、オットー・ヘラー撮影によるコントラストの強い映像、そしてマイケル・ケイン演じる主人公ハリー・パーマーの飄々とした演技が組み合わさり、個性的なスパイ映画として高く評価されました。1965年の英国アカデミー賞では、作品賞、撮影賞など3部門を受賞。英国映画協会（BFI）による20世紀のイギリス映画トップ100では59位にランクインしています。

アンチヒーロー：ハリー・パーマー

主人公ハリー・パーマーは、黒縁眼鏡をかけ、労働者階級訛りで話し、自分で料理をするなど、従来のヒーロー像とはかけ離れた存在です。名前も「間抜けに聞こえる」という基準で名付けられました。エリート・スパイであるジェームズ・ボンドとは対照的な、等身大のアンチヒーローとして描かれています。

原作者のデイトン自身も料理が得意であり、映画ではパーマーが料理をするシーンで、ケインの顔が映る場面以外はデイトンが手元を演じています。

続編と影響

本作の成功を受け、ハリー・パーマー三部作として、『パーマーの危機脱出』(1966年)、『10億ドルの頭脳』(1967年)が製作されました。その後、1990年代にはテレビ映画『国際諜報員ハリー・パーマー/Wスパイ』『国際諜報員ハリー・パーマー/三重取引』も製作され、いずれもマイケル・ケインがハリー・パーマー役を演じています。

ハリー・パーマー三部作は、1960年代に量産された007の亜流とは一線を画し、カルト的な人気を博しました。特にイギリスでは根強い人気があり、コメディスパイ映画『オースティン・パワーズ』の主人公は、ハリー・パーマーのパロディキャラクターです。また、劇中でパーマーが着用していた黒縁眼鏡は、オリバー・ゴールドスミスの「コンサル」というモデルで、復刻版が作られるほどの人気を博しています。

ストーリー

イギリス陸軍軍曹ハリー・パーマーは、軍の物資横流しで逮捕されますが、その才能を見込まれ、スパイとして働くことになります。原子力技術の権威であるラドクリフ博士が誘拐され、パーマーは博士の捜索を命じられます。誘拐の黒幕は「ブルージェイ」という男が率いる国際的な組織で、博士を東西両陣営に売り渡そうと企んでいました。捜査の過程で「イプクレス」という謎の言葉が浮上します。

パーマーたちは誘拐組織と接触し、博士を救出しますが、その際にCIAの局員を誤って射殺してしまいます。さらに、救出した博士は洗脳されており、精神を破壊されていました。パーマーたちは組織を追跡するうちに、同僚やCIA工作員が次々と殺害され、自身も洗脳の危機にさらされます。

キャスト

ハリー・パーマー：マイケル・ケイン
ロス大佐：ナイジェル・グリーン
ダルビー少佐：ガイ・ドールマン
ジーン・コートネイ：スー・ロイド

スタッフ

製作：ハリー・サルツマン
監督：シドニー・J・フューリー
脚本：ビル・キャナウェイ、ジェームズ・ドーレン
音楽：ジョン・バリー

『国際諜報局』は、従来のヒーロー像を覆す主人公、冷戦下の緊張感、そして洗脳というテーマが組み合わさった、異色のスパイ映画です。

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