土、または地上の楽園

作品概要

『土、または地上の楽園』（仏: La Terre ou Le Paradis terrestre, 英: The Earthly Paradise）は、バロック期のフランドルの画家、ヤン・ブリューゲル（父）が1607年から1608年にかけて銅板上に油彩で制作した絵画です。この作品は、四大元素（土、火、水、大気）をテーマにした連作の一つで、「土」の要素を地上の楽園として表現しています。

ヤン・ブリューゲルは、ミラノの大司教フェデリコ・ボッロメーオからの依頼を受け、1607年に制作を開始し、1616年から1618年にかけてミラノに送られました。1618年には、連作は大司教によってミラノのアンブロジアーナ図書館に寄贈されました。しかし、フランス革命中の1796年にフランス軍に略奪され、パリへと運ばれました。

革命後、『火』と『水』はアンブロジアーナ図書館に返還されましたが、本作『土、または地上の楽園』と『大気』は返還されず、現在はルーヴル美術館に所蔵されています。

作品詳細

この作品は銅板に描かれており、エナメルのような光沢を放っています。画面には、鑑賞者の眼前に広がる森と、中央の木々によって二分された広い空き地が描かれています。ブリューゲルは、陽光を浴びる前景の広葉樹や植物の葉を、細心の注意を払い綿密に描いています。花々も、植物学的に正確かつ微細に表現されています。

森の中には、ライオンやヒョウなどの肉食獣、シカ、馬、牛、ヤギ、ウサギ、さまざまな鳥など、多種多様な動物たちが描かれています。また、画面左側からは巨大なゾウもやってきて、すべての動物たちが平和に共存しています。この絵画は、細部においては写実的な描写に裏打ちされながらも、全体としては幻想的な風景画として描かれています。

左側の遠景には、知恵の木の果実を指さす父なる神とアダムとイヴが描かれています。『旧約聖書』の「創世記」によれば、神によって創造されたアダムとイヴは、エデンの園で平和に暮らしていましたが、神から知恵の木の果実は食べてはならないと命じられていました（2章17）。この画面には、すでに人間の「堕落」が表現されており、もし原罪を犯さなければ、二人はここで動物たちと共に満ち足りた平和な生活を送ることができたはずでした。なお、ブリューゲルは本作の後に、『人間の堕落のあるエデンの園』（マウリッツハイス美術館、デン・ハーグ）も描いています。

ギャラリー

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参考文献

• - ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年刊行、ISBN 978-4-7993-1048-9
• - 坂本満 責任編集『NHKルーブル美術館V バロックの光と影』、日本放送出版協会、1986年刊行　ISBN 4-14-008425-1
• - 大島力監修『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年 ISBN 978-4-418-13223-2

外部リンク

• - ルーヴル美術館公式サイト、ヤン・ブリューゲル『土、または地上の楽園』 （フランス語）

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