土呂久砒素公害

土呂久砒素公害について

土呂久砒素公害は、1920年から1962年にかけて宮崎県西臼杵郡高千穂町の旧土呂久鉱山で発生しました。この地域では亜砒酸が製造され、その結果として生成された重金属粉塵や亜硫酸ガスが環境に放出され、周辺の川も汚染されました。この公害は主に住民の健康に深刻な影響を及ぼし、皮膚の色素異常や皮膚癌、肺癌など、多くの病気を引き起こしました。

公害の発生と被害

公害の発生場所は、特にV字型の谷が特徴的な地区でした。亜ヒ酸の製造は1920年から1941年、その後1955年から1962年に再開され、30年近く続きました。この間、多くの住民が健康被害に悩まされ、195名が慢性砒素中毒として認定されています（2015年時点）。中でも、死亡者が150人にのぼるというデータは、事態の深刻さを物語っています。

初めは被害が「村の恥」として隠されていましたが、1971年の西日本新聞の報道を機に、次第に公害問題が世に知られるようになりました。同年、教職員らが公害の実情を発表し、報道機関に取り上げられたことで、真剣な調査と関心が集まるようになりました。

歴史的な背景

1920年、亜砒焼を開始した宮城正一が鉱山の運営を行い、以降、亜ヒ酸製造とそれに伴う公害阻止がますます問題視されていきました。様々な報告や世間の関心が高まり、1970年代には一連の健康検査が行われ、初めて公害の実態が明るみに出ることとなりました。

健康症状と診断

公害の影響により、住民の健康状態が悪化し、皮膚症状や呼吸器、眼科などさまざまな症状が現れることが確認されました。特に、皮膚に関する臨床検査では、慢性ヒ素中毒と診断されることが多く、ボーエン病や内臓の癌、末梢循環障害なども新たに発見されています。

また、皮膚症状に関しては、特に被服部位において雨だれ状の白斑や角化症が見られることが特徴的です。これらの健康問題は、地域住民の生活を深刻に脅かしました。

法的対応とその後

1975年には、住民が被害を訴える裁判を起こしました。この裁判は15年にわたる長期の闘争となり、1984年には原告が勝訴し、最終的には全面的な勝訴を得ます。その結果、住友金属鉱山との間で和解が成立し、損害賠償が行われましたが、責任の所在は曖昧なままでした。

日本国内外における砒素公害

土呂久砒素公害は、日本国内における砒素公害問題の一つに過ぎません。宮崎県では、松尾鉱山においても同様の公害が発生し、土呂久と同じように、多くの健康被害が報告されています。さらに、堀田らは世界中の砒素公害を調査するアジア砒素ネットワークを設立し、規模の大きな問題であることを訴え続けています。

土呂久のケースは、環境問題と健康被害についての教育、意識の向上において重要な教訓を含んでいます。

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