土壌呼吸

土壌呼吸

土壌呼吸とは

土壌呼吸とは、土壌に生息する多様な生物（微生物や植物の根など）の活動に伴って、土壌中から二酸化炭素（CO2）が大気中に放出される現象です。これは、植物が光合成で大気から取り込み土壌に蓄えられた炭素が、生物の呼吸や有機物分解を経て再び大気へ戻る、地球の炭素循環における重要なプロセスの一つです。

土壌呼吸の主な担い手は植物の根と土壌微生物です。植物の根は光合成産物を利用して呼吸を行います。土壌微生物は、枯れた植物体や動物の遺体、根から分泌される有機物などを分解し、その代謝活動を通じてCO2を放出します。土壌動物も有機物を摂取・分解する過程でCO2を出すほか、土壌構造を改善して微生物活動を間接的に促進します。

土壌呼吸速度を制御する要因

土壌呼吸の速度は、様々な環境要因によって変動します。

温度: 温度が上昇すると生物活動が活発になり呼吸は増加しますが、最適な範囲を超えると低下します。
土壌水分: 適度な水分は呼吸を促進しますが、乾燥しすぎたり過剰で酸素が不足したりすると呼吸は低下します。
栄養分: 窒素などの栄養分が多いと、植物や微生物の活動が活発になり呼吸が増加する傾向があります。
酸素濃度: 好気呼吸を行う生物にとっては十分な酸素供給が必要です。

土壌呼吸の測定方法

土壌呼吸は、特定の区画を覆ってCO2濃度変化を測るチャンバー法や、放出されるCO2の安定同位体比から起源を特定する方法などによって測定されます。

人間活動が土壌呼吸に与える影響

人間活動は土壌呼吸に大きな影響を与えています。

大気CO2濃度上昇: 大気中のCO2増加は植物の成長を促進し、土壌呼吸を増やす可能性があります。

地球温暖化: 温度上昇は土壌呼吸を加速させ、放出されるCO2がさらに温暖化を招くという正のフィードバックをもたらします。特に永久凍土の融解による影響が懸念されています。

降水パターンの変化: 降水量や頻度の変化も土壌呼吸に影響し、特に乾燥地域での降雨は呼吸を一時的に大きく増加させます。

窒素肥料の施肥: 農耕地への窒素施肥も土壌呼吸を増加させる要因となり得ます。

土壌呼吸の地球環境における重要性

土壌呼吸は、地球の炭素循環と気候変動において非常に重要な役割を果たします。

土壌は膨大な量の炭素を貯蔵しており、土壌呼吸による年間CO2放出量は人為的な放出量を上回ると見積もられています。そのため、土壌呼吸速度のわずかな変化でも大気中のCO2濃度に大きな影響を与え得ます。また、土壌呼吸は土壌有機物の分解に伴う栄養素循環とも関連が深く、生態系の機能維持に不可欠です。特に、温暖化と土壌呼吸の間の正のフィードバックは、将来の気候変動予測において重要な要素となっています。土壌呼吸の動態を理解することは、地球環境の未来を予測する上で欠かせません。

もう一度検索